八十岡×川崎のスタンダード・ウォッチング

RPTQバンクーバー直前編

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久しぶりの方、お久しぶりです。

そして、はじめましての方、はじめまして!

突然にして唐突なので、はじめましての方のために簡単に解説すると、かつて、MTG日本語公式サイトmtg-jp.comにて超不定期に掲載されていたスタンダード解説記事がありました。

その名も、『八十岡×川崎のスタンダード・ウォッチング』!!

八十岡×川崎の「新」スタンダードウォッチング:第1回
八十岡×川崎の「新」スタンダードウォッチング:第2回
八十岡×川崎の「新」スタンダードウォッチング:第3回
八十岡×川崎の「新」スタンダードウォッチング:第4回

ざっくりと内容を紹介すると、特にプレイをするというわけではないのにスタンダードのメタゲームの流れを知りたいだけのカタリ野郎である僕こと川崎 大輔に、「マジックの鬼神」八十岡 翔太さんが丁寧にスタンダードを教えてくれるという体裁で茶番を繰り広げる記事でした。

そして、プロツアー・バンクーバー2015地域予選 東京大会というスタンダードの超大型イベントを前に、メタゲームを知りたいという僕のテンションが高まりに高まって、公式に無断で勝手に復活させてしまったというわけなのです!

というわけで、プロツアー地域予選に向けてのスタンダードメタゲームの旅をナビゲートしてくれるのは、スタンダードで開催されたプロツアー『タルキール龍紀伝』で見事準優勝した、「青黒の鬼神」八十岡 翔太さんです!!
八十岡 翔太



八十岡 「っていうか、これ、ほんとに公式に何も言わずに復活させたんでしょ?大丈夫なの?」

川崎 「ん?うーん……んー、まぁ、うーん」

八十岡 「なに、なんなの?はっきりしてよ」

川崎 「そんなことより、プロツアー準優勝、おめでとうございました!」

八十岡 「だからいつも言ってるじゃん、準優勝は会場で一番最後に負けてるんだから、そんなにおめでたくないんだってば。そんなことより、勝手に復活させて大丈夫なの?」

川崎 「しかし、八十岡さん、久々っちゃ久々ですよね」

八十岡 「強引にごまかしてきたね。まぁ、川崎さんが公式のカバレージをやらなくなってからグランプリの個人戦も優勝できたし、前回は個人戦プロツアー準優勝したし、川崎さんはマジックの仕事をしないほうがオレにとってはいいんじゃないかと思うんだけど」

川崎 「……しかし、八十岡さん、久々っちゃ久々ですよね」

八十岡 「そういう無視し続けるパターンあったっけ?まぁ、いいんだけどさ。で、いままでのスタンダード・ウォッチングみたいに、スタンダードのメタゲームの話をしていけばいい、って感じなんだよね?」

川崎 「そうですね。もう、4年くらいやってない気がするんで、どういう感じでやってたか、正直僕もよく覚えてないんですけど、とりあえずやり始めればなんとかなるかなー、みたいな」

八十岡 「適当だなぁ……そういやさ、この記事が載るDig.cardsってサイトさ、結構詳細なアーキタイプ解説が掲載されてるじゃない」

川崎 「あ、ライザこと石村さんが作成しているやつですよね。あれ、すごくないですか?」

八十岡 「うん、すごい。で、あれがあるなら、もう、スタンダード・ウォッチングみたいなメタ解説の記事必要なくない?デッキの動きから、強いデッキ・弱いデッキまで解説されてるんだからさ」

川崎 「あー」

八十岡 「ね」

川崎 「んー。あれですよ、あれ」

八十岡 「どれ?」

川崎 「ほら、とはいえ、八十岡さん独自の視点のメタ分析とかみんな聞きたいと思いますし、ひとつの記事にまとまってるのもいいじゃないですか。まぁ、この記事、いつも長すぎるって言われるんですけど。というわけで、いいじゃないですか、ね?ね?」

八十岡 「ダメだ、この人、自分がやりたいだけだ」

そんなわけで、いつもどおり長い前振りを経て、久々のスタンダード・ウォッチングスタートです。

なお、今回は、インタビュータイミングの都合上、グランプリ京都と同時開催だったグランプリ・クラクフはスタンダードで行われていましたが、特には言及いたしません。ご了承ください。
 

プロツアー前のメタ予想と『タルキール龍紀伝』


川崎 「なんか、グランプリ京都のニコ生でも少し話題にあがってましたけど、mtg-jpの方で、今回八十岡さんが使ったデッキの調整録的な記事をあげるんですよね?」

八十岡 「うん。その予定だね」

川崎 「まぁ、じゃあ、八十岡さんがどうやってあのデッキを作ったかはそちらの記事を読んでいただくとして、とりあえず、プロツアー前に予想していたメタゲームの話を聞かせてもらおうかなと」

八十岡 「とりあえず、プロツアー前に開催された『タルキール龍紀伝』入りのスタンダード大会StarCityOpen.com Invitationalがひとつの指標にはなるよね」

川崎 「津村さんがmtg-jp.comにて詳細な解説記事を書いてますよね。このトーナメント自体の解説はそちらに任せるとして、やっぱ、八十岡さんでもこういう直前に開催されたトーナメントの結果とか気にするんですね。なんか、あんまそういうの気にしなそうなイメージですけど」

八十岡 「そりゃするよね。別に自分が使うつもりはないけど、他の人達がどんなデッキを使ってくるかっていうのには影響が大きい情報だからね。極端な話、このSCG Invitationalsの結果だけみてプロツアーに来る奴だっていたりするわけだし」

Goblin Rabblemaster / ゴブリンの熟練扇動者 Siege Rhino / 包囲サイ

川崎 「あぁ、なるほど。ざっくりSCG Invitationalのメタゲームをまとめると、赤単をはじめとした早いデッキと、それを打ち倒すアブザンコントロールをはじめとしたボードコントロール系のデッキ、っていうメタゲームだったわけですよね」
 
Nykthos, Shrine to Nyx / ニクスの祭殿、ニクソス Atarka's Command / アタルカの命令

八十岡 「そうだね。で、赤単系は、この時はまだ使われてないこともあったけど 《アタルカの命令》 で圧倒的に強化されてるだろうから使う人は多いだろうし、アブザン以外で赤単に強い緑信心系のデッキも多いだろうな、っていう感じだったね」
 
Crux of Fate / 命運の核心 Dissolve / 解消

川崎 「そして、それらの緑信心系やアブザンコントロールに強い青黒コントロールが存在しますね。通常のメタゲームの流れだと、って今度はその青黒コントロールに強いデッキが台頭して……って感じでまた赤単に戻ってって感じでメタゲームのサイクルが出来上がり、果たしてどのあたりがプロツアーのメタか、というあたりでメタを読むことになりますよね」

八十岡 「いや、そうでもない」

川崎 「え?でも、主にデッキの速度を指標にして相性差がサイクル上になるのって、メタゲームの基本中の基本って感じじゃないですか」

八十岡 「まぁ、それはそうだし、そうなるとそもそもメタゲームを読むっていう行為の意味とかもでてくるんだけどさ。ただ、とりあえずプロツアーに限っては違う。というか、最近、プロツアーで勝てるメタゲームの読み方を発見したんだよね

川崎 「え?プロツアーで勝てるメタゲームの読み方?どういうことですか?最近のプロツアーのメタゲームの傾向ってことですか?それ読めるのすごくないですか?」

八十岡 「まぁ、そんな難しい話ではないんだけどね。今の(新商品発売直後に開催される)スケジュールになってからだと思うんだけどプロツアーのメタゲームは一段階しか進まないんだよね。逆に、二段階進んだメタゲームを想定してデッキを作っていくと、メタが噛み合わないで大体負ける」

川崎 「一段階?どういう意味、というか、どっから見て一段階ですか?」

八十岡 「んーと、新商品発売直後にみんなが想像するメタゲームから、かな?今回みたいに、直前に大型大会があればそこからって言っていいと思う。それもあるから、直前の大会の上位デッキはチェックしておいたほうがいいんだけどね」

川崎 「あぁ、なるほど。例えば、今回の『プロツアー・タルキール龍紀伝』で言えば、赤系のビートダウンがストレートに強力なデッキで、それに強いアブザンコントロールや緑信心系が上位に多くなる。で、そこからさらに一段階先の、それらに強い青黒コントロール系が有利、っていうところまでしかメタゲームは回らないってことですね」

八十岡 「うん、そういうこと。リミテッドとの兼ね合いとかもあって、最近はそういう傾向があると思う。逆に、青黒コントロールが多くなるだろうから……っていうところまでメタを読んでしまって作ってきたデッキは勝てない」

川崎 「なるほど。今回、八十岡さんに会う前に、たまたま渡辺(雄也)さんにあって、メタゲームの感想を簡単に聞いてみたら『みんな思ったより考えてこないストレートなデッキを使っていた』って言っていたんですが、むしろ、最近のプロツアーの傾向はそうだってことなんですね」

八十岡 「そうだね。で、今回は青黒コントロールが強いだろう、ということで青黒コントロールを使ったんだよね、オレは」

川崎 「ん?大体、青黒じゃないですか、八十岡さん」

八十岡 「そんなことないよ。オレ、勝てるデッキの時しか青黒を使わないよ」

川崎 「いやいやいや、って言おうと思ったんですけど、まぁ、確かにジャンド使ってたりすることもありますし、いったん納得しないと話進みそうにないんで、そういう事にしましょうか」

八十岡 「みんな人に青黒キャラみたいなのつけるの好きだよね。キャラとかでデッキ選ばないでしょ」

川崎キャラでデッキ選んでたことあった気もしますけどね……まぁ、いいです。じゃあ、プロツアーのメタゲームは大体予想通りではあったってことですね」

八十岡 「んー、まぁ、そうだね。例えばトップ8で言えば、事前は、勢いで上がってくる赤単がひとり、赤緑の中速以上のデッキがひとり、アブザン系と青系が二人ずつ、その他のデッキが二人、みたいなイメージだったんだけど、実際はアブザンより青系が多くなったね」

川崎 「八十岡さん自身がトップ8に入った分、少しブレたんじゃないですかね」

八十岡 「あぁ、人数数える時に自分をカウントし忘れるみたいなやつね」

川崎 「そういう感じですね。じゃあ、プロツアーですごい予想外の新しいデッキ、みたいなのはあまりなかった感じでしたか」
 
Thunderbreak Regent / 雷破の執政

八十岡 「そうだねぇ。実際、アブザン系や緑信心系、赤単系あたりは『タルキール龍紀伝』前にあったデッキのアッパーバージョンみたいなもんだしね。あ、でも赤緑ドラゴンとか、 《龍王オジュタイ》 が入ったエスパーコントロールなんかは、『タルキール龍紀伝』で新しくできたデッキタイプだね。あのへんは強いドラゴンあってなんぼだから」

川崎 「強いドラゴン、と言えばなんですけど、実際のところ『タルキール龍紀伝』がメタゲームに与えた影響ってかなり大きかったんですか?」

八十岡 「プロツアー全体でのドラゴンの使用率見てもわかると思うけど、『タルキール龍紀伝』で強いドラゴンが増えて、環境全体のフィニッシャーが塗り替わったのは間違いないと思うよ」

川崎 《龍王オジュタイ》 とかむちゃくちゃ強いですもんね。そういや、さっきの渡辺さんにあった時に、ついでに5匹の龍王の強い順のランキングを作ってもらったんですよね」

八十岡 「へぇ。どんな感じ?」

川崎 「こんなかんじでしたね」

龍王ランキング 渡辺編
1. 《龍王オジュタイ》
2. 《龍王アタルカ》
3. 《龍王シルムガル》
4. 《龍王ドロモカ》
5. 《龍王コラガン》

八十岡 「ふうん」

川崎 「渡辺さんは、どんだけ青黒好きのヤソでも、このランキングはさすがに同じだろう、って言ってましたよ」

八十岡 「いやいやいや。だから、青黒好きキャラとか勝手に作られても困るんだよね」

川崎 「じゃあ、八十岡さんのランキング教えて下さいよ」

八十岡 「いいよ」

龍王ランキング 八十岡編 1位
 
Dragonlord Silumgar / 龍王シルムガル

八十岡 「1位は、 《龍王シルムガル》 だね」

川崎やっぱ、青黒好きじゃないっすか!!!

八十岡 「青黒っていう色が強い」

川崎やっぱ、青黒好きじゃないっすか!!!

八十岡 「実際、もちろん色の要素は重要なんだけどさ、他にどういうカードがあるかってのもあるし。とはいえ、このカードはただただ単純に強いと思う。とりあえず、プレインズウォーカーを取れるっていうのはすごい強いよ」
 
Xenagos, the Reveler / 歓楽者ゼナゴス Nissa, Worldwaker / 世界を目覚めさせる者、ニッサ Elspeth, Sun's Champion / 太陽の勇者、エルズペス

川崎 「青黒系相手に対して、メインなりサイドボードなりでプレインズウォーカーを追加することが多いですし、それに対抗できるフィニッシャーっていうのは強いですよね」

八十岡 「うん。龍王の中でも 《龍王シルムガル》 は戦場にだしたときの盤面をまくる能力がずば抜けて高いんだよね。ゲームをコントロールするだけの力があるカードだと思うよ」

川崎 「なるほど。最初から渡辺さんと結構大きく変わってきましたけど、まぁ、青黒好きの八十岡さんですからね」

八十岡 「青黒好きとかじゃないんだけどね」

川崎 「じゃあ、2位はあのカードですか」

龍王ランキング 八十岡編 2位
 
Dragonlord Atarka / 龍王アタルカ

八十岡 「2位は 《龍王アタルカ》 だね」

川崎 「え、 《龍王オジュタイ》 じゃないんですか!?」

八十岡 「冷静に考えて、 《龍王アタルカ》 はカードとしてのスペックが壊れてる。7マナで8/8の飛行・トランプルが戦場に出た時に5点ばらまくってすごいよ。 《龍王シルムガル》 ほどじゃないけど、これも盤面をまくる能力がずば抜けてる」

川崎 「赤緑っていう色はどうですか?」

八十岡 「色は悪くないんだけど、むしろ、これだけのスペックだと、無理やり色をタッチしたりして使ってもいいんじゃないかな」

川崎 「プロツアーを見た感じ、そういうデッキも多かったですしね」
 
Crux of Fate / 命運の核心

八十岡 「そうだね。オレも使えるデッキが無いか、結構考えたんだけどね。ラス( 《命運の核心》 )撃って、さらに 《龍王アタルカ》 だす、みたいなデッキを考えてたんだけどリストにまではならなかったかな。なんであれ、 《龍王アタルカ》 のお陰で 《命運の核心》 も強くなったと思う」

川崎 「なるほど。で、3位があのカードなわけですね」

龍王ランキング 八十岡編 3位
 
Dragonlord Ojutai / 龍王オジュタイ

八十岡 「そうだね。3位はさすがに 《龍王オジュタイ》

川崎 「そうなんですねぇ……渡辺さんはさすがに1位 《龍王オジュタイ》 は間違いないって言ってましたけど」

八十岡 「視点の差なのかな。こいつは、結局ちょっと強いだけのカードで、普通のフィニッシャーなんだよね。もちろん、弱くは無いんだけどさ。不利な場をまくってくれるカードじゃない」

川崎 「例えば、色が青黒だとしても、ですか?実際、青黒に 《龍王オジュタイ》 だけタッチするみたいなデッキはかなり多くありましたけど」
 
Baneslayer Angel / 悪斬の天使

八十岡 「うーん、色が青黒でも 《龍王シルムガル》 の方が上だとオレは思う。さっき言ったように、 《龍王オジュタイ》 はただのフィニッシャーで勝ってる盤面で勝ちを確定させるカードだからね。そういう意味では青白っぽいカードだよね。攻防一体じゃないんだよ。だから、出したターンの防御要素が少ない弱い 《悪斬の天使》 だよ」

川崎 「あぁ、なんとなく言いたいことがわかってきました。例えば、僕なんかはパワーが5で、出したら4ターンで決着をつけるフィニッシュ力の高さなんかも加点要素なんですけど、八十岡さんの考えで言えば、むしろパワーは4でいいからタフネスが5だったらもっと評価してたって話ですね」

八十岡 「そうそう。手番を入れ替えるだけのインパクトは 《龍王オジュタイ》 にはない」

川崎 「なるほど。そういう意味では本当に視点の違いってのはありますね、この上位3王に関しては。じゃあ、4位いきましょうか」

龍王ランキング 八十岡編 4位
 
Dragonlord Dromoka / 龍王ドロモカ

八十岡 「4位もなにも 《龍王ドロモカ》 で確定じゃないかな。このカード、龍王の中でもダントツなスペックではあるけど、残念ながら色がものすごい弱い。緑白でこのカードを有効に使えるデッキっていうのが作れないのが 《龍王ドロモカ》 の評価を下げてしまう原因ではあるね。だから、もし使えるデッキがでてくれば評価が変わる可能性がある」

川崎 「まぁ、色が弱いって言っても、クリーチャーの色である白緑だからこのスペックってのもありますからね。ちなみに、 《龍王ドロモカ》 が青黒だったらどうですか?」

八十岡 「さすがに強すぎるでしょ。 《龍王シルムガル》 より上だと思う」

川崎 「ですよね」

八十岡 「カウンターして、ラス( 《命運の核心》 )撃って、次のターンに 《龍王ドロモカ》 着地っていう動きできるなら、環境最強のデッキかもね」

川崎 「で、5位はやっぱりあの人なんですね」

八十岡 「ん?5位って?」

川崎 「え?4/5まで決まったんだから自動的に5位は確定しますよね?」

八十岡最初っから龍王って4しかいなくない?四天王でしょ?

川崎 「そこまで言います?」

龍王ランキング 八十岡編 5位
 
Dragonlord Kolaghan / 龍王コラガン

八十岡 「こいつは龍王を名乗る資格はないと思うけどね。正直な話、5マナだったとしても使われていたかどうかは怪しい」

川崎 「実際、プロツアーの会場にはほとんどいなかったっぽいですね」
 
Rorix Bladewing / 刃の翼ロリックス

八十岡 「だって、 《刃の翼ロリックス》 じゃん、ただの」
 
Bladewing the Risen / 帰ってきた刃の翼

川崎 「もう一回 《帰ってきた刃の翼》 ってことですか」
 
Kolaghan, the Storm's Fury / 嵐の憤怒、コラガン

八十岡 《龍王コラガン》 についてあと特筆することがあるとしたら、コイツだけ1280年前の方が明らかに強いんだよね。それも含めて、龍王を名乗る資格はないと思う」

川崎 「なるほどなぁ……」
 
Silumgar, the Drifting Death / 漂う死、シルムガル

八十岡 「シルムガルなんて、どっちも強いんだよ?少しは見習ってほしい」

川崎 「青黒贔屓が過ぎて、この人、 《黄金牙、タシグル》 なんじゃないかって気分になってきましたよ。まぁ、スタンウォッチの伝統で考えれば、ここまで八十岡さんが言うのはフラグなんで、RPTQで 《龍王コラガン》 を使ったデッキが活躍しそうな気がしてきました」

八十岡 「さすがにないと思うけどね……」
 
Sidisi, Brood Tyrant / 血の暴君、シディシ Whip of Erebos / エレボスの鞭

川崎 「そういや、八十岡さんといえば、『プロツアー・タルキール覇王譚』では、世間の流行に先んじてスゥルタイカラーのシディシウィップを使ってたりと先見の明があることでおなじみですけど、ドラゴン以外で『タルキール龍紀伝』で注目していたカードってありました?」
 
Den Protector / 棲み家の防御者 Deathmist Raptor / 死霧の猛禽

八十岡 「あのシディシウィップこそ、二段階進んだメタゲームのデッキ作って嵌ったパターンだったけどね。今回は 《棲み家の防御者》 《死霧の猛禽》 のコンボはデッキを作れれば強いだろうな、って考えてたね」

川崎 「会場には彩色剥ぎデッキとかも居ましたもんね。ジョン・フィンケルとかが使ってたやつですね」

八十岡 「あれはさすがにファンデッキだと思うけどね」

川崎 「じゃあ緑白信心とかで使うんですか?」

八十岡 「いや、考えてたのはシディシウィップ」

川崎 「青黒好きだなー」

八十岡 「そういうんじゃないんだけどねー」
 

『プロツアー・タルキール龍紀伝』のデッキ


川崎 「さて、プロツアー前の話も大体終わったので、実際のプロツアーで活躍したデッキを見て行きましょう。まずはトップ8からですかね」

八十岡 「今回のトップ8は、メタゲームの縮図みたいなところあるし、いいんじゃないかな」


川崎 「最終順位の順番で見て行きましょうか。まずは優勝した赤単タッチ 《ドロモカの命令》 ですね。これはプロツアー前から本命と言われていましたし、本命デッキがそのまま優勝したって感じですかね」

八十岡 「まぁ、リスト自体は至って普通の赤単だしね。トップ8にひとつは赤単が入るだろうって思ってて、トップ8まで行けば優勝もありえるかなとは思ってたね。今回は、予想よりも赤単が有利な青黒系がトップ8に多かったから、より優勝しやすい状況だったのかなとは思う」
 
Goblin Rabblemaster / ゴブリンの熟練扇動者 Hordeling Outburst / 軍族童の突発

川崎 「そういえば、このリストみて気になったのは、『基本セット2015』発売直後には赤単を選択する理由にまでなっていた 《ゴブリンの熟練扇動者》 の枚数が減っていることですね」

八十岡 「うーん、まぁ、あれなんだよね、もう、3マナのアクションとしては弱いんだよ」

川崎 「え?これだけのカードパワーでダメなんですか!?」

八十岡 「もちろんカードパワーは高いんだけどさ、今の環境での3マナでのアクションとして、1対1交換で処理されてしまうカードでは勝てないんだよね。だから、 《軍族童の突発》 の方が今は優秀。ましてや 《アタルカの命令》 をいれるならなおさら数で押すのが大事だよね」
 
Zurgo Bellstriker / 鐘突きのズルゴ

川崎 「赤単が『タルキール龍紀伝』で手に入れたカードといえば、あとは 《鐘突きのズルゴ》 ですかね。このカードはかなり赤単が強くなるのに貢献していますよね」

八十岡 「うん。強い 《今田家の猟犬、勇丸》 だからね」

川崎 「ほとんどブロックしないですしね。あと、疾駆能力、通称『ピンポンダッシュ』も強いですよね」

八十岡 「そうだね。もともと赤単って1マナ域が足りないっていう弱点があったんだけど、これだけのクオリティの1マナ域が登場したのは大きいよね。実際、さっき 《ゴブリンの熟練扇動者》 で話した3マナのアクションの質の変化は、そこの前のマナ域のアクションの質が変わったからってのもあると思うよ」
 
Dragon Fodder / ドラゴンの餌 Roast / 焙り焼き

川崎 「他にも 《ドラゴンの餌》 《焙り焼き》 と『タルキール龍紀伝』では赤単は強力なカードを沢山手に入れましたね。 《ドラゴンの餌》 がアラーラで登場した時はこんなに強くて使われるカードになるとは思いませんでしたね」

八十岡 「そうだね。 《焙り焼き》 《包囲サイ》 《クルフィックスの狩猟者》 を処理できるのは大きいよね」
 
《アタルカの命令》

川崎 「あとは、やっぱり 《アタルカの命令》 ですかね。緑をタッチするだけの理由になっているカードですね」

八十岡 「まぁ、占術土地を入れたいってのもあるだろうし、緑タッチはわからなくはない動きだよ。トークンを並べた時の全体+1/+1モードが強いのはもちろんなんだけど、相手が 《包囲サイ》 を出した時に、ライフを獲得を妨害しつつ3点与えて、相手のライフ計算を6点ずらす動きも強いよね」

川崎 「さて、赤単はこれくらいにして、続いて2位のデッキと、それと同タイプのデッキを見てきましょう」



川崎 「というわけで、2位の八十岡さんをはじめとした青黒系コントロールですね。予選ラウンドでみれば、今回の勝ち組だったデッキと言っていいですよね」

八十岡 「そうだね。思ったより青黒は勝っていたよね」

川崎 「実際の八十岡さんのデッキ構築の調整記はmtg-jp.comを楽しみにしていただくとして、プロツアーで使ってみて思ったより強かったカードってありました?無いとは思いますけど」

八十岡 「あったよ」

川崎 「あ、珍しいですね。どのカードですか?」
 
Silumgar's Scorn / シルムガルの嘲笑

八十岡 《シルムガルの嘲笑》 だね」
 
Counterspell / 対抗呪文

川崎 「あぁ、やっぱり、弱い 《対抗呪文》 とはいえ、2マナで確定カウンターできる事があるってのは強かったってことですか」

八十岡 「いや、使ってみてわかったんだけど、この呪文、 《対抗呪文》 より強いことがある

川崎 「え?いやいや、さすがにそんなことは無いんじゃないですか?ドラゴンの条件付きで 《対抗呪文》 でそうじゃない時は2マナの 《魔力の乱れ》 ですよね?じゃあ、 《対抗呪文》 より弱い動きをすることがあっても、 《対抗呪文》 より強い動きをすることはないじゃないですか」

八十岡 「いや、そこが違うんだよ。オレもそう思ってたんだけど、実は、モードがあるってのが思ったより大きかったんだよね」

川崎 「でも、モードがあるって言っても、必ず 《対抗呪文》 より弱いわけじゃないですか」

八十岡 「使う側からするとそうなんだけど、使われる側からすると 《対抗呪文》 より弱い、つまり対抗できるモードがあるっていうのがおもったより曲者なんだよね」

川崎 「うーん、よくわからないですね……」

八十岡 「例えばさ、まぁ、川崎さんが青黒使ってるオレと対戦してて、マナが土地を置いてちょうど6マナだとするじゃない。で、手札が6マナのスペルと土地。この場合、どうする?」

川崎 「え?そりゃ、まぁ、アレですよね。 《魔力の乱れ》 モードの 《シルムガルの嘲笑》 にひっかかったら馬鹿らしいと思うんで、土地置いて、1マナ余らせて6マナのスペル使えるようにするんじゃないですかね」

八十岡 「土地置いて、エンドするよね?」

川崎 「そうですね」

八十岡 「で、次のターンに1マナ余らせて6マナのスペル使ったらドラゴン見せながら 《シルムガルの嘲笑》 使われたらどう思う?」

川崎 「あー、ドラゴン持ってたかー。じゃあ、前のターンに出してても同じだったなー、って思うんじゃないですかね」

八十岡 「でも、前のターンにマナぴったりで呪文使ってきたら、オレ、ドラゴン見せる必要ないよね」

川崎 「あ、そうか!なまじ 《魔力の乱れ》 モードがケア出来そうに見えるから、マナを余らせるために無駄なターンを過ごしちゃうことがあるんですね!」
 
Time Walk

八十岡 「そういうこと。弱い 《対抗呪文》 に見えるかもしれないけど、結果的に 《対抗呪文》 《Time Walk》 になることがあるんだよね」

川崎 「なるほど。それは確かに言われてみないと意外と気がつかないですね」

八十岡 「まだみんながこのカードの対応に慣れてないだけで将来は変わるかもしれないけど、プロツアーの時点ではそういう強さはあったよね。準決勝とかも、相手がケアのためにマナクリーチャー召喚しかしないみたいなターンがあって、勝てたしね」
 
Hero's Downfall / 英雄の破滅

川崎 「ついでにもうちょっと八十岡さんのデッキの使ってみた感想について聞きたいんですけど、ヤマケンこと山本 賢太郎さんが『ヤソのデッキに 《英雄の破滅》 が3枚しか入っていない時点で、プレインズウォーカーが強いとかそういう環境じゃないんだな、って思った』って言ってたんですけど、実際、プレインズウォーカーは弱くなってるんですか?」

八十岡 「いや、強いでしょ、プレインズウォーカー」

川崎 「そうですか」
 
Icefall Regent / 氷瀑の執政

八十岡 「まぁ、 《氷瀑の執政》 で倒しやすくなってるとかもあるし、恐いプレインズウォーカーもそこまで居なくはなってるけど、そもそも、プレインズウォーカーがどうこうじゃなくて 《英雄の破滅》 を4枚入れるという発想がそもそもないんだよ、青黒に

川崎 「メタとかじゃなくて、ってことですか」

八十岡 「他になんもカードがないならしかたないんだけどさ。3マナのアクションが多い青黒は弱いんだ。強い青黒は2マナのアクションが強い。1マナがもっと強いなら、3マナのカードをもっと入れてもいいのかもしれないけどさ」

川崎 「つまり、4マナの状態で2アクションとれるかとれないかが重要ってことですか」

八十岡 「そういうこと。さっき 《龍王シルムガル》 の時にも少し話したけど、青黒の戦略って、どこかで盤面をまくって攻守を入れ替えるタイミングが必要なんだ。で、普通は2ターン目に2マナのアクション、3ターン目に3マナのアクションって動いてから、4ターン目に2マナのアクション×2って動いて相手が1マナでしていたであろうアクション分手数を取り返して、5マナの強力カードで攻めに転じるっていう動きが理想なわけ。4マナに 《嘘か真か》 《精神を刻む者、ジェイス》 クラスの強いカードがあるならまた話は違うけど、今は4マナも弱いしね」

川崎 「なんか本格的な構築論ですね。 《解消》 の枚数もそうなんですね」

八十岡 「うん。だから、環境のプレインズウォーカーが……とかの理由で 《英雄の破滅》 の枚数を決めることはオレの場合はほとんど無いんじゃないかな。除去枠に 《英雄の破滅》 を4枚入れるしか他に除去が無いとか、4ターン目の2アクションを肯定するとかそういう4枚入れることが許されてからやっと考えるかな。でも、多分、それでも3枚が限界だと思う」
 
Dig Through Time / 時を越えた探索

川崎 《時を越えた探索》 が3枚なのもそこが大きいんですね」

八十岡 《時を越えた探索》 は手数を取り返してくれる可能性が高いカードなんだけど、2枚め引いちゃうと厳しいからね。4枚いれるとなると、フェッチを6枚とかにしないといけないだろうけど、そのためだけにフェッチ増やすのはね……オレ、ライフ大好きだから、そのために1点くらうのはやだね」

川崎 「コントロールは、ライフが1点あればいい、19点まではくれてやる、って格言もありますけどね」

八十岡 「そのへんって本当に感性の違いかなと思う。それこそ 《英雄の破滅》 4枚いれるかとか、 《龍王シルムガル》 《龍王オジュタイ》 どっちが強いかとかもだけど、同じ青系でも青白と青黒では全然考えが違うからね。コントロールは負けパターンを減らすのが大事だとは思うんだけどそこに対する考え方が全然違うと思う」

川崎 「なるほど。さっき言った、コントロールは、ライフが1点あればいい、19点まではくれてやるっていうのは青白っぽい考え方で、青黒は違うと」

八十岡 「それが青白かはオレもわからないけど、少なくとも、どのタイミングではらった1点でも、それが最後の1点になって、最後の1ターンにつながる可能性がある、ってオレは考えるけどね」
 
Foul-Tongue Invocation / 忌呪の発動

川崎 「その考えで行くと、 《忌呪の発動》 なんかは大好きなんですね」

八十岡 「これは期待していたとおりに強かった」
 
Stratus Dancer / 層雲の踊り手

川崎 「渡辺さんは、予想以上に強かったって言ってましたね。あと八十岡さんのデッキについてだと……サイドボードの 《層雲の踊り手》 は結構特徴的ですね。このカードはどうでした?」
八十岡 「強かったね。同型は宇宙だったよ。このカードをサイドに取る上で重要なのは、序盤からのクロックではあるんで1本目負けた時、あと2本やるプランを残せることなんだよね。負けた時に勝てるプランを作るのがサイドボードの役割なんだから、サイドにコイツを用意するのは大事だと思うよ。 《真珠湖の古きもの》 の入った青黒とか相手したら、1本目は絶対勝てないのにすごい時間かかって結局良くても引き分けとかになっちゃうんだから」


川崎 「なるほど。八十岡さんの青黒の話が少し長くなってしまったので、残りのデッキは少し短めにいきますか。まずは、スイスラウンド2位の青黒ですが、こちらはノンクリーチャーですね」

八十岡 「そうだね。そもそもこの人、 《リリアナ・ヴェス》 大好きだから、 《リリアナ・ヴェス》 で勝ちたいだけじゃないかっていうデッキなんじゃないかとも思うよ」

川崎 《英雄の破滅》 を始め3マナのスペルが多いですね」

八十岡 「リセット多くて逆転のポイントをそこに置いてるんだろうね。ちょっと前の環境の青黒ってこんな感じだったと思うんだけど、そういう意味でコテコテの青黒っていう言い方もできると思う」

川崎 「ちなみに、こういう青黒って、青黒同士で戦う場合どうなんですか?」

八十岡 「うーん、まぁまぁ、かな。同型はちょっと有利だとは思うけど、かわりに 《真珠湖の古きもの》 入ってる相手には絶対に勝てないから、すぐ投了しないとダメだね」


川崎 「最後に 《龍王オジュタイ》 の為に白タッチした形の青黒ですね。会場では一番メジャーなタイプの青黒だったんじゃないでしょうか」

八十岡 「まぁ、わからなくはないよね。すごくまっとうな考え方だと思う。さっきああは言ったけど 《龍王オジュタイ》 を青黒使ってて欲しくなるってのはわからなくはないよね」


川崎 「ちなみに、今回、チャネルファイアーボールのメンバーが選択したのもこのタイプの青黒でしたね。こちらもトップ8進出はなかったものの、かなりの勝率を記録していますね」

八十岡 「チャネルのデッキのほうが普通に組んだ青黒タッチ白って感じはするよね。特に、メインデッキに入っているクリーチャーが呪禁持ちだけで、サイド後に相手が除去を抜くか悩ませられるのはいいよね。相手がサイドに悩むってのは結構なアドバンテージだからね」

川崎 「それに比べると、トップ8のAndrew Ohlschwagerさんのデッキは 《時を越えた探索》 2枚だったりと結構独特な構築ですよね。あと、ドラゴンも多いですね」

八十岡 《時を越えた探索》 2枚は全然アリだと思うよ。このデッキは 《血の署名》 が入ってたりと、さっき言った2マナのアクションをかなり重要視していると思う。そういう意味では実に青黒らしい青黒だね」

川崎 「どういうスタンスで青黒を見てる人なのかもうわからないですね……やっぱ 《黄金牙、タシグル》 なんじゃねーかな、この人」




川崎 「さて、結構長くなってきたので、少しペースアップしましょうか。続いては対赤単デッキとして優秀なアブザンコントロールと緑信心系デッキですね」

八十岡 「アブザンなんかはホント、メインに新しいカードがないよね。 《棲み家の防御者》 《死霧の猛禽》 を入れる、みたいなのもアリかなと少し考えたんだけどね」

川崎 「そのへん、緑信心系は赤をタッチして 《龍王アタルカ》 を入れるってのがスタンダードなリストになってますよね」
 
See the Unwritten / 書かれざるものの視認

八十岡 「緑信心が求めていたカードだからね、まさに。Ondrej Straskyのデッキは 《書かれざるものの視認》 も4枚入れて、実質8枚 《龍王アタルカ》 が入ってるみたいなもんだし、このカードがどれだけ強いか、って話だよね」

川崎 「Ondrej Straskyさんのデッキはかなり完成度が高いようにみえますね」
 
Genesis Hydra / 起源のハイドラ

八十岡 「そうだね。話してたのはサイドボードに 《起源のハイドラ》 は取ったほうがいいかもね、くらいかな。青黒系にやっぱり致命的に弱いから、数少ない青黒に強いカードをサイドに取るべきかなとは思う。特に今後のメタゲームを考えるなら」

川崎 「そういう意味では、 《書かれざるものの視認》 じゃなくて 《起源のハイドラ》 が入っているThomas Hendriksさんのデッキのほうがメタを読んだデッキだな、って感想ですか」

八十岡 「いや、これは多分、ずっと使ってた緑信心系に 《龍王アタルカ》 いれただけじゃないかな。メタゲームとかじゃないと思う」

川崎 「そうですかね。 《龍王アタルカ》