企画記事

人見 将亮のグランプリシンガポール優勝レポート

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マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用

Dig.cardsをご覧の皆さんはじめまして。
この度、縁あってGPシンガポールの優勝レポートを寄稿する機会をいただいた人見 将亮です。友人からは、みっくすと呼ばれることが多いので皆さんもお気軽によろしくどうぞ。

僕はいわゆる競技思考のプレイヤーとしては旧ミラディンから大会に出始めたのですが、別にこれと言って戦績も無く、たまには招待制イベントにちょっと出られる程度の実力で平凡などこにでも居る感じのMTG好きです。
旧ミラディンは10年程前に発売されたのでもう随分と長くMTGをプレイしていますが、いつの間にか周りの友人が次々と勝ち、羽ばたいて行くのを見送る側で安定してしまっていました。プロツアーへもう一度出たい、その為にPTQで勝ちたい。などと言う気持ちはどんどん薄れ、仕事を言い訳に一生懸命になれない自分をごまかしていたのですが、転職を機に時間の都合が非常につけ易くなり、さらにここ数年でMTGを始めたプレイヤーがどんどん活躍しているのを見てもう一度本気になりたいなと考えていました。

さて、そんな僕がGPシンガポールへ参戦を決めた理由は2つあります。

1つ目はプロツアーへの道が従来のPTQからRPTQやPPTQなどの新システムに移行した事です。
移行後は2度関東圏のPPTQに出場しましたが優勝する以外に意味はなく、さらにRPTQも突破する必要がありハードルが高いイベントで他府県行脚が前提だなというのが正直な感想でした。
僕はメタゲームが毎週変わるスタンダードを追いかけるのがとても辛く、デッキテクや練習量では日常的にスタンダードをプレイしている競技プレイヤーにはなかなか勝てないとここ数年感じていたので、PPTQをサーキットしその為に練習する時間を国内、海外を問わず1発勝負のGPの為に使いたいと考えました。

2つ目は開催時期近くにプロツアーが無く環境変化スピードの遅いモダンで開催されるという事でした。
モダンは年に何度か禁止カードの改定があり、直近では 《出産の殻》 《宝船の巡航》 《時を越えた探索》 が禁止カードとなりメタゲームが大きく変動した後で環境が安定し、カードプールが非常に多くそしてどのデッキも最低限のデッキパワーを保持している為に突出して多いデッキというものがなく、「いつもなんでも存在する」環境変化の遅いフォーマットな為、時間の都合はつけやすいし長時間練習する事を厭わないがスタンダードは避けたいという僕の要望とマッチしつつ、直近のスケジュールと噛みあっていたことや1つ目の理由もあって11月のGP神戸を待つのではなく、海外へ目を向けたのでした。
懸念事項としてはGPシンガポールの2週間前あたりにシャーロットとコペンハーゲンでモダンのGPが開催され、そこでメタゲームが大きく変わることでしたがそれを懸念していては身動きが取れないのでこの時点では気にしないことにしました。

勿論、海外まで行くと決めたからには勝ちたいですしTOP8ないしはTOP4入賞によるプロツアー参加権利の獲得が目標です。しかし直近に参加した構築のGPはどちらも2BYE込みで神戸6-3、京都4-3と2回連続初日落ちで良い流れではありません。
理由は色々ありますがすべて練習方法に問題があると強く感じ、大きく意識と方法を変える必要がありました。
個人的に親交のあるトッププロの市川ユウキ君と山本賢太郎君は、本業をこなしつつもGP前になると睡眠時間を削って明け方までマジックオンラインで毎日練習していることを以前から知っていた僕は、彼らのような兼業プロのトップ層ですら、それほど練習するのならば、練習量で負けていては話になりませんし、だらだらやっていても仕方がありません。
彼らの練習と同等レベルの質と量を伴った練習をしようと決意しました。

 

情を排除し、理で行動する

やると決めたからには絶対勝つ。誰よりもこなしたゲーム数が多い状態で挑もうという気持ちはあります。しかし量と同時に練習の質も高める必要があると考えました。
その方法を模索する為に一つ、自分の中でルールを設定しました。それが「情を排除し、理で行動する」です。

これから情と理の違いの説明に入ります。先に断っておきますがMTGは大前提として楽しむためのゲームです。どの理由もどんな方向性も平等にすばらしく全て肯定されますし、僕も普段は大会後の食事で大騒ぎすることをメインに参加しています。しかし、あくまでも今回は勝つことを目標としているのであえてわかりやすい【情】【理】という表現にしています。その点はご理解ください。

情とは
ゲームの楽しさや刺激を優先すると勝利を阻害することや放棄に繋がる場合があります。
ターンを必要以上にかけすぎる、成功率が非常に低いコンボに固執する、ドラゴンで必ずトドメを刺す。相手にカードの効果を読ませ、説明することで満足する。など、勝利への最短距離、最大効率を意識していない行為。勝つ以外でMTGを楽しむ場合これらの要素も大事ですし最優先事項になることもありますが今回の僕には不要な要素です。

例)

・このカードで追加ターンを3ターン得れば相手を本気で驚かせることができる!!(ただし15マナとキーカード5枚が必要)
・どうしてもこの魂のお気に入りカードで勝ちたいし僕はビートダウンを絶対使わない!
・先月手に入ったこのカードを使わないのは勿体無いし減価償却したいなぁ。
・あのデッキに負けることだけは許さない。サイドボード15枚入れるぜ。
・トリプルマリガンしてしまったから勝ち目は薄い。でも名を残したい、目立ちたいから手札は見ねぇぜ!!このままキープ!!

理とは
ことわり。理論の理。読んで字の如し。
好きなデッキタイプに固執しない。主観でカードの能力や効き目を判断せずデータを信用する。特定のデッキ、特定のカードだけを必要以上に対策せずデッキを構築する。など、勝つ為に己のこだわりや楽しみを捨てる事。人によっては楽しさと正反対の行為ばかりになることもあります。GP直前の練習で相性のいいデッキに連敗したときなど、デッキを変えたくなりますが、今までの有利だとはじき出されたデータを信じてそのまま出場するのも理の行動となります。

例)
・環境の主要デッキの内9割のデッキはクリーチャー主体なためディフェンシブかつ除去を多く搭載し自分と同じコンセプトのデッキにはプレインズウォーカーで圧力をかけよう。
・自分のデッキはこれ以上除去カードが不要だ。特定のデッキに圧勝するよりトーナメントに優勝するための全体像を想像し、適切な配分でサイドボードを構築しよう。
・コンボデッキの使用経験はないがXXマッチ練習した結果一番いい勝率をだしたのがこのデッキであるから選択しよう。
・○○君のデッキには一度も勝ったことはないが、この大会に勝つための構築をしよう。

ではこれらを踏まえたうえで僕が練習量を担保するために選んだマジックオンライン(以下、MO)で練習する利点を述べます。

1. 同じ練習時間でもリアルとオンラインではこなせるゲーム量が倍以上違う。
現実世界で大会に出るためには原則として朝早くに起床し身支度を整え車あるいは公共交通機関を使い会場へ行き、受付をすませデッキリストを記入し第一ラウンド開始のアナウンスを待ちシャッフルおよびマリガンチェックを行なう必要がありますが、MOでは早く起きる必要すらありません。あなたが起きた時間から大会スタートです。(それでも最低限必要な事は済ませましょう)また早朝と夜の時間でもゲームが出来ることが最大の利点です。

友人と何人かで集まってしまえばリアルの方がこなせるゲーム数は多いと思いがちなのですが、MOではイベントの参加時間をずらすことで1つのイベントの合間に複数のイベントを進行させることが可能でラウンドとラウンドの間の待ち時間を無駄にすることがありません。また、万が一待ち時間ができたとしても食事の準備や家事、身支度などに時間を使え、結果的に効率的に時間を配分することが可能なため、時間効率という観点からは圧倒的にMOが優れています。

2.    チケットがすべてという超資本主義のため、あまりにも弱いデッキは淘汰される。
MOではイベントへの参加とカードを買うためにイベントチケットという仮想通貨を使用します。イベントに勝つと原則としてブースターパックが貰え、それを売却することで新たにチケットを手に入れ・・・とこの様に勝ち続けることで課金せずに遊べてしまいます。そのため、チケットを稼げないデッキ=負けるデッキ=弱いデッキとなり自然とフィールドから姿を消します。

3.    GPに参加する強豪や勝ちたい人はもれなくマジックオンラインで練習を積んでいる。
2の理由から強いデッキを探している人や所謂グラインダー(ものすごい量のゲームをこなし勝利を目指す人)達は当然効率よくそれらを行いたいのでMOを主戦場とします。
ここ数年はあまりみかけませんがマジックオンライン発のデッキテクも存在するため、近年一定のレベルを超えた人はほとんどMOを導入しています。

MOで練習することがどれだけ理の行動かつ量を担保できるかは理解して頂けましたでしょうか。では次に練習の質を高めるステップにうつります。

 

どうやって練習の質を担保するか

新禁止カード施行後のモダンをプレイするにあたり情報収集はかかさず行なう必要があり、デイリーイベントの入賞デッキおよびアメリカの賞金制トーナメントであるSCGの結果は主にGoldFishで非常に細かくチェックしました。特に水曜日はマジックオンラインがサーバーメンテナンスでプレイできない為、マイナーなデッキのサイドボードなども細かく調べて覚えます。これは別に上手い下手が関係の無い勉強の様な部分でやればやるだけ自分に返ってくることもあり眠くなるまで続けます。珍しいリストや気になるものはすべてブックマーク。

他には海外サイトのChannel fireballにあるフランクカーステンさんのPTレポートやそのプレイ記事を暗記するレベルまで読み込み、全く同じリストでデイリーイベントに出てみるなどのコピー練習も行いました。最新のモダン環境についての記事や新しいデッキなどはこの当時全くWEB上には無く、古い記事の発掘とセオリーの復習が精一杯でした。
一口に古い記事と言ってもモダンは昔から健在なデッキも多く有用な記事も多く残っているのでバカにできないので注意が必要です。

これらの情報収集を行なうことで試合を行なう際に「なんのデッキだ?見たこと無いカードが飛んでくるぞ?」という混乱し、所謂「わからん殺し」に合う可能性が低くなります。負けて覚えることも大事ですが、GPで似たようなデッキに当たらない保証はどこにもないですし、1ゲームも無駄にしたくないので事前学習量は多い方が良いです。

特殊なパターンとして、これは正直気分転換の一種だったので練習と言って良いかはわかりませんが某格闘ゲームの世界一有名なプレイヤーの方が出ている2時間程の長い動画で「一般的に不利と言われているマッチアップを分解して考える」ということを丁寧に説明しているものがあり「なぜ不利なのか、本当に不利なのか」を考察することの重要性を学んだりもしました。普段の僕は「まあ○○と☓☓ならセオリーで考えて○○が有利だろ」ということが多く、考察した末に時間が無駄になる事も受け入れた上で少しこちらにも時間を割きました。

なぜ親和で調整を開始したのか?

練習方法についての話が長くなってしまいましたが本題に移ります。
僕が最初の調整デッキとして親和を選んだ大きな理由は大別して以下の3つです。

《オパールのモックス》 《バネ葉の太鼓》 による加速で先手後手を逆転可能でブン回りが存在する。
MTGではほとんどがそうかもしれませんが、モダンでは特に先手後手で有利不利の相性が変わるマッチアップが多いです。
例1)トロンVSジャンドで大爆発の魔導師が間に合うか否か
例2)親和VSグリクシスデルバーで2ターン目刻まれた勇者を差し戻しできるか否か
すこし例題が雑ですが親和にはこの様なケースを逆転できるマナ加速が豊富に有り、バーンの様な超攻撃的デッキ相手でさえ強制的に守勢へまわす事ができます。

・周囲に初手依存系デッキを嫌う人が多い。
青赤系の瞬唱の魔道士デッキやBG系は使用者が多くそれらを本番で使用するのであれば後からテクニックを聞けばいいので、多くの友人が嫌う初手依存系デッキの親和やバーンを僕が調整するほうが効率的だと言うこと。

・親和で出ると決めている友人がすでに二人居る。
一見【情】とも見えるこの要素ですが、勝利の原動力となったのはこの部分だと思いますので、詳細に説明します。

使用デッキを絞っている友人が二人もいるということはすぐに情報交換を行える相手が存在し、非常に理にかなっています。
この二人と言うのはチーム豚小屋の河浜 貴和さんと、BIGMAGICの公式チャンネルで毎日ニコニコ生放送を行っている村栄龍司君です。
二人は過去に親和を使用してPTQを突破したことのある強豪で参考になる意見が聞けるのではないかと思い、LINEのグループチャット機能で5月20日からずっとデッキやプレイの相談を行ってきました。ちなみに、僕の具体的なプレイ時間は平日が19時すぎから1時までで金土日は体力の続く限りやっていましたが村栄君や河浜さんは早朝や深夜からプレイを開始することも多く、まさに24時間稼働でした。一度だけメンテ明けの午前4時に起きて4時間ほど8人構築でプレイしていたのですが仕事への影響が大き過ぎた為、僕には不向きということで生活リズムは崩さずにプレイすることにしました。しかし改めて文字にすると不気味な集団ですね。

 

親和を持ってシンガポールに行った理由

GP千葉が終わり、本格的にグループチャットでの議論が進みますが仕事の始業と終業の時間にズレがあり、僕が昼休みに入ると未読が40件などというのは珍しくありませんでした。それらを読み終えて一番先に帰宅する僕がオンラインで試し、二人が少し遅れて帰宅して同時に試す。という流れが基本で、村栄君の生放送を僕と河浜さんが自宅で視聴しLINEで「あそこはこうだった。サイドインはこうだった」などと検討をすることも常時行いました。この時、3人とも苦手と感じるマッチアップが違いお互いに教えあえたのも大きなアドバンテージです。

特に僕は青赤双子相手のプレイがとても苦手でサイドボーディングも様々な記事の真似をしていたのですが、村栄君が「タフネスの低いクリーチャーと勝ちに直接繋がりそうにないものは抜いてひたすら除去を構え、無限コンボだけを警戒しているので僕は勝率悪くないですよ」と教えてくれ、「○○があったら負けでなければ勝ち」というオールイン戦略を取っていた僕の考えを改めさせ、勝率UPに貢献してくれました。

逆に僕は村栄君がBG系に勝率が悪いと言うので、どのようなサイドボーディングをしていたのか聞くと、 《メムナイト》 《感電破》 が全部残っていたので「 《メムナイト》 《タルモゴイフ》 等で簡単に止まり、 《感電破》 も同じく肝心の 《タルモゴイフ》 を倒せないし手札の回転率が悪いので不要牌となる。BG系に勝つときは 《刻まれた勇者》 かテンポ差なので火力で最後の4点を押し込むということは無く、ライフゲインも多く入っているBG系にはこれらが不要だ」ということを理解してもらえほぼBG系に負けなしというレベルまで成績が上昇しました。

意見交換やデッキ調整も少し行き詰まって来たある日、悪い意味での転機が訪れます。

突然オンライン上で親和が強烈に対策され始めてしまい僕の勝率が著しく悪くなってしまいました。元々僕は今回のGPに限っては【理】に従い特定のデッキに固執するつもりは無く、世界の動きや調整の結果次第では別のデッキに乗り換えるということは事前に二人には相談していたので一度親和を離れ当初の予定通り初手依存系のバーンを調整することにしました。しかし今思い返せば対策を跳ね除ける方法を模索せずに時間効率ばかりに囚われており【情】のデッキ変更で恥ずかしい限りです。

もちろんバーンの調整は僕一人で行い、引き続きLINEのグループチャットでは出来る限り自分の意見を出しつつ二人の考えを共有してもらいます。

ところがバーンは仕事から帰ってきてすぐ組み上げたにも関わらず寝る1時前には「何にも勝てない」と言うこれまた自分のプレイや構築を見直さず解体を決め、次はどうしようかなと半日ほど悩み抜き、だれも調整していないであろうウルザトロンを調整することにしました。この手のデッキはプレイ経験が少なく、周りからも「え、今からトロン使うの!?」というリアクションがある程でした。手始めに完全コピーからということでどこにでもあるようなリストに手を出し、相性のいい相手に圧勝し双子とバーンと感染リビングエンドアミュレットコンボに負け続けました。トロンはウルザランドを最低でも3ターンかけて用意するので自分より速いリセット耐性のあるデッキは苦手なのです。

繰り返しますが今回の目標は普段の構築GPより良い成績を残す事。

圧倒的相性差で勝って気持よくなるデッキを探すことは【理】ではなく【情】なためあえなく解体。

別ルートで友人から教えてもらった 《白金の天使》 4枚と 《否定の契約》 入りの緑単トロンは苦手なバーンや感染などにも勝てましたが、やはりどうやっても双子が癌になっており今度こそ真のお蔵入りに。奇跡的にトロンに有利なメタゲームになれば使用するつもりでしたがSCGオープンでトロンが2連続優勝し、土地系のデッキを使うことも難しくなってしまいました。

行き詰まった僕はそろそろBG系か青赤系を誰かに教わろうかとも思ったのですが、連日連夜生放送で勝ち続けている村栄君を見て世界が親和のガードを下げていることに気が付き、最後にもう一度だけ親和の可能性に賭けてみることに。

GPシャーロット開催前週あたりから勢力を伸ばしてきた 《コラガンの命令》 入り双子やジャンドなどは一見相性が悪く見えますが、実際にプレイすると3色ならではの噛み合わなさなどで5分5分程度はあるなというのが体感でした。

次の画像は村栄君が親和を調整し始めてからあたったすべてのデッキとの勝敗です。
当時の僕はまさか今回のような結果になると思わず僕と河浜さんはLINE上でその日の成績をつぶやき、こういったデータ整理を怠っていたので村栄君には感謝しています。

 

親和はバーン、マーフォーク、グリクシスデルバーにはかなり良い勝率を叩き出していますがこれは村栄君の成績であって僕と河浜さんの戦績をあわせるともっとエルフとストームと感染には負けています。しかしながら前述の先手後手を入れ替えられるアドバンテージを重くみている事もあり、親和を選択する気持ちに揺らぎはありませんでした。

更に僕が解体したデッキ達も決して無駄ではなく、それらのデッキ視点で親和側にどう動かれると辛いかという事がハッキリとわかり村栄君も親和を使う前は生放送中にグリクシスデルバーとタルモツインを使用していた為、3人の勝率もじわじわとですが確実に上がって行き結果としていい方向に。

次の画像は本戦で使ったリストと1枚違いのもので、サイドボードに摩耗損耗が1枚入っています。

 

この時サイドボードに採用していた理由は白黒トークン、親和ミラー、双子、オーラ、その他のデッキにも幅広くサイドインできる受けの広いカードでなおかつ 《石のような静寂》 に対しての僅かな抵抗というものですが、これだけ練習して親和ミラーに 《古えの遺恨》 の枚数差で負けるのは耐えかねるという感情論と、自分と同じ理由で親和を選ぶ人も一定数居るはずだという後付に近い少し無理矢理な理由を作りGP前日の夜に3枚目の 《古えの遺恨》 に変更しました。ここは全く【理】の要素がないので反省点です。
※河浜さんと僕は同じリストで、村栄君はメインの感電破を1枚だけアーティファクトの魂込めに変更して出場。

この様にGP前夜まで最終的に使用するリストは決まりませんでしたが、約1ヶ月半の間3人で考えてきたデッキだったので直前の変更も不安はありませんでした。

グループチャットで特定のデッキを議論する際に重要な事は、参加している全員が目標とする同じイベントに参加する事、そのデッキを使いたい、勝ちたい、と真剣に考えている事ですがガチガチの意見をぶつけあうわけでは無く、仲の良い友人同士のチャットなので話もしばしば脱線しますし実際にはこんな雰囲気になります。あまりにも脱力感があったので載せませんが最後の二日間は食事とネックピローの話しかしていませんでしたし。

 



 

GPシンガポール本戦戦績

初日
PWPによる2BYE
アブザンカンパニー◯×◯
グリクシスデルバー◯◯
タルモツイン◯××
アブザンジャンク◯◯
URGスケープシフト◯××
ナヤズー◯◯
青単マーフォーク◯◯

初日はすべてMOで練習したことのあるマッチアップでしたが、タルモツインとスケープシフトには親の仇の如く 《古えの遺恨》 を連発され敗北。青相手のプレイになると自分では気づいていないミスも多かったと思います。

 

二日目
緑単ストンピイ○○
ナヤズー○☓○
アミュレットコンボ○○
緑単信心ランプ○○
4色詐欺師の総督入りカンパニー○○(TOP8のTay Jun Hao選手)
青赤純正双子○○

二日目は相性の良いフェアデッキとのマッチアップが多く、非常にラッキーでした。
緑単ストンピィの方には10年ぶりに 《酸化》 をプレイされ親和への憎しみを感じましたが、GPに出れば必ず一人はこういう相手に当たりますし勝っているので結果オーライ。
一番のアンチカードである 《石のような静寂》 は一度もプレイされずこれもまたラッキーな部分でした。
決勝ラウンドの対戦組み合わせなどは日本語公式サイトに掲載されていますがその中で記事になっていなかった僕の問題のあるミスを紹介したいと思います。
準々決勝でマッチングされた高橋優太選手とのメインボード戦、お互いのデッキリストは事前に公開され、何が入っているかを把握できる状態のゲームです。

僕の先手で記事中にもありますが 《墨蛾の生息地》 《オパールのモックス》 《バネ葉の太鼓》 、で 《メムナイト》 等の0マナ・1マナクリーチャーなしという手札をキープし1ターン目に 《バネ葉の太鼓》 をプレイした所でターンをエンドしてしまった場面です。

この時の僕の思考は「 《オパールのモックス》 をプレイすると僕が次のターンに3マナもしくは2マナ+2マナのアクションをしてくるかもしれないと思われ、情報を与えてしまうのでプレイせずエンドが妥当」だったのですが、高橋選手のメインデッキには 《呪文貫き》 がメインから2枚入っており2ターン目にプレイした 《オパールのモックス》 を見事に 《呪文貫き》 でカウンターされてしまいました。運良く土地を引けていたので 《呪文滑り》 をプレイできましたが、僕が正しいプレイをし、高橋選手があの時 《呪文嵌め》 を持っていなかった場合、 《バネ葉の太鼓》 《呪文滑り》 をタップし出したマナと 《オパールのモックス》 のマナで 《電結の荒廃者》 をプレイでき完璧な動きができただけに情けない限りです。このミスの問題点は僕が「カウンターされても○○だから△△でOK」と自分の中で検討した上での温存ならそれがたとえ不正解でもまだマシだったのですがリストがわかっている状態にも関わらず検討もしていないことが一番の問題でした。

通常GPの決勝ラウンド特に準々決勝はお互いが同意しなければデッキリストは非公開な事が多いのですが、今回は「どちらかが希望すれば公開」という僕に有利な条件であったことも記しておきます。何故、有利かと言いますと僕の使用デッキである親和のメインボードは固定されているのが一般的でその中身を知ることに意味はほとんどありません。

しかし高橋さんは通常、青赤系のデッキが採用している親和に対して抜群の効果を発揮する 《電解》 《ヴェンディリオン三人衆》 《やっかい児》 などの瞬速持ちクリーチャーも非採用で僕のプレイが非常に簡単になり、警戒すべき点が試合前に大きく減り本当は減らしたく無い 《信号の邪魔者》 のや 《鋼の監視者》 をサイド後も多く残すことができました。

また、スイスラウンド順位に基づく先手も併せると有利な要素が非常に多かったと思います。

準決勝の川崎さんは 《魂の裏切りの夜》 を2枚、 《滅び》 を1枚サイドに採用しており通常のジャンド戦であれば 《粉砕の嵐》 《突然の衰微》 に強い 《ちらつき蛾の生息地》 などが封殺されてしまう危険がありました。そのため普段は入れない 《血染めの月》 を入れ、土地が潰されてしまってもチャンスを作れるように 《感電破》 を2枚残しました。これはあの場のアドリブで決めたことではなくGP初日の段階で村栄君、河浜さんと相談して事前に決めていた事です。

結果的に僕のドローが強くこれらのプランは影響がありませんでしたが、 《血染めの月》 0の 《感電破》 4残しで「親和はジャンド相手に 《感電破》 を抜く」と言うセオリーをずらし相手の裏をかいた方がよかったなと思います。

決勝戦、僕は存じ上げませんでしたが地元の英雄らしいSteven Tanさんとの親和ミラー。
ここにきてこのGP始めてのミラーマッチですが、この瞬間の為に僕は 《古えの遺恨》 を3枚採用しており、対するSteven Tanさんは摩耗 // 損耗を3枚。

正直に言います。この時、この瞬間だけはハッキリ貰ったなと思いました。
TanさんはGPTOP8に二回と国別選手権を優勝している僕よりはるかに格上の方ですし微塵も貶めるつもりはありませんがあえて調子にのって言うなら「Tan、貴様迷ったな?」と。
僕がLINEで何回「相手だけ 《古えの遺恨》 全部引いてんねんけど!」と愚痴を言ったと思っているのかと。それだけこのマッチアップは遺恨が左右することを理解していました。

リストを見るとTanさんは「俺は 《石のような静寂》 にさえ負けなければあとはどうにかする自信があるぞ」という非常に丸い構成でした。 《急送》 は火力にこそなりませんが双子相手にも 《タルモゴイフ》 にも 《黄金牙、タシグル》 にもプレイできる除去ですし、どんな時も普通にカードを引ける 《物読み》 、1枚だけ入った 《エーテリウムの達人》 。すべて僕ら3人ですでに検討したカードや構成ばかりでした。

結果だけみればお互いトリプルマリガンで即死のゲームが2本あり良いゲームで実力だとは言いがたいものですが、最後の最後に 《古えの遺恨》 が活躍し優勝。

GP前夜に摩耗損耗について二人に相談したあの僅かな時間がフラッシュバックしてきました。

 

まとめ

今回、僕は自分が対戦相手側なら間違いなく愚痴を言うであろうレベルの凄まじいドローで優勝という最高の結果を迎えた訳ですが、採用した練習方法についてはこれで良かったのかと自問自答する部分があります。
マジックオンラインでの練習は確かに時間効率と言う観点から見ると良かったのですが僕の練習方法はとにかく数をこなすだけで反省やリプレイを見ることはほとんどせず、目を瞑ってやみくもにバットを振り続けていただけだったのでは・・・と。もちろんやらないよりは良いのですが、【理】がなんだかんだと冒頭で言っておいて一番【情】の練習方法を採用していたことは反省点として今後に活かせればいいなと思う反面、これしかやり方を知らないし今は代案も思いつかないのでまたやってしまうだろうなと言うのが正直な感想です。また、どれだけ突き詰めようとしても人間誰しも最後は【情】で動いてしまうことも再認識できました。

僕個人の反省とは少し違うのですが、3人で長い期間調整したのにもかかわらず最終的に村栄君は1枚違いのデッキリストで出場することになりました。
僕と河浜さんからより【理】にかなった説明、説得が出ていれば3人とも同じリストで出場できていたはずです。

しかし、グループチャットで河浜さん、村栄君と3人で考えたあの方法に間違いはなかったと確信していますし二人と一緒に掴んだ勝利を今は素直に喜び10月のプロツアーへ向けて気持ちを高めていこうと思います。

もし、僕が今モダンのPPTQに出るなら親和は使わず感染かストームを使います。
どちらも親和に強く、対策カードが被っていないので。
どうしても親和を使いたい場合、感電破は減らし物読みを増量することで古の遺恨で消耗負けしないように工夫するのがいいのでは無いかと思いますが石のような静寂は諦めて下さい。

最後までお付き合いありがとうございました。
いつかどこかで対戦する機会がありましたら、お手柔らかにお願いします。

 

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