企画記事

渡辺雄也・佐々木大輔特別対談:メディアとしてのプロプレイヤー(前編)

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日本を代表するプロプレイヤーと言えばだれか?

現在であれば、ほとんどの人が渡辺雄也の名前を挙げることだろう。

海外では『ジャパニーズ・ジャガーノート』とまで形容される圧倒的な強さを持つ渡辺雄也。国内外を問わず多くのファンを持つプレイヤーであり、殿堂入りも間違いないとされている正真正銘のスタープレイヤーだ。

そんな渡辺に、マジックのプロプレイヤーの代表として、マジック業界の外の人との対談をしてみないか、というオファーをし、快諾された。曰く、「僕も、他の業界の人がマジックのプロプレイヤーをどう見ているのか聞いてみたかったんです」

対談相手としてオファーしたのは、LINE株式会社、エンターテイメント事業部執行役員、佐々木大輔氏だ。

livedoor BlogやLINE BLOGといったサービスの提供を通じて、「個人のメディア化」についてのスペシャリストであると同時に、「家眠杯(注1)」の呼びかけ人にもなるマジックファンでもあり、渡辺の質問へもっとも的確な回答ができる人物なのは間違いないだろう。

渡辺雄也と、佐々木大輔。ジャンルの違う2人のプロフェッショナルが、マジックとメディアの関係について、そして、マジックのプロプレイヤーのあり方について、熱い意見を交わす。

渡辺雄也・佐々木大輔特別対談:メディアとしてのプロプレイヤー(後編)
 
●注釈

注1:家眠杯

「細けえことはいいから家に眠っているデッキそのまま持ってこい杯」略して「家眠杯」。
佐々木氏のTwitter上での提案から始まり、実際に晴れる屋トーナメントセンターで開催された大会。細かいレギュレーションなどを無視して、とりあえず家で眠っている昔使っていた懐かしのデッキを持ってきて遊ぼうという趣旨で開催された。
晴れる屋トーナメントセンターでの開催の他、グランプリのサイドイベントや、ニコニコ超会議でのマジック公式ブースでの特別開催など、公式を巻き込む一大ムーブメントとなった

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■僕、本当にただのマジックマニアなんですよ



--本日はお忙しい中、ありがとうございます。

佐々木 「今回、お会いできるのを本当に楽しみにしてたんですよ。渡辺プロの大ファンなので」

渡辺 「いやいやいや」

佐々木 「本当ですよ、憧れの人とこうして話せるって嬉しいですね」

渡辺 「そういう風に言っていただけることって、実際に結構あるんですけど、自分ではどうしても実感がわかない部分もあって……」

佐々木 「渡辺プロくらいになると、グランプリとかでサインを求められたりすることも多いですよね?」

渡辺 「そうですね……特にアジアのグランプリに行くとすごいサインを求められますよ。あ、でも、前にアジアのグランプリで『写真とっていいか?』って聞かれたんで、『いいよ』って答えてポーズをとろうとしたら、僕の使ってるトークンの写真を撮りたかったっていうことがあって……あれは恥ずかしかったですね」

佐々木 「アジア圏で特に人気が高いってのはわかりますね。身近に感じられる存在が世界レベルのスターだってのはうれしいし、当然、応援したくなりますよね」

渡辺 「いやいや、僕なんてまだまだですよ」

佐々木 「僕もそういう感じで、渡辺プロのことは特に身近に感じていたからこそ、大ファンになったんですよ。社会人になってからマジックに復帰したのが2006年だったんですが、その頃、関東の草の根大会、神奈川のPWC(注2)や千葉のLMC(注3)で渡辺プロの姿を見ていたんです。自分も参加していた草の根大会出身のプレイヤーが世界的なスターになるってのは、これはもう、ものすごくうれしいことなんですよ!」

渡辺 「2006年っていうと、僕が京都のグランプリ(注4)を優勝する前の年ですね」

佐々木 「そうです。準優勝された2006年末のThe Finals(注5)。僕、あの時、会場にいたんですよ」

渡辺 「権利をお持ちだったんですか?」

佐々木 「いえ、権利はもっていなくて、ただ観戦に行っただけです。そのときはマジックに復帰したばかりのときですから余計に、地方にいたときには見たくても見れなかった有名選手のプレイングを見てみたいと思ったんですね」

渡辺 「マニアですね」

佐々木 「そうなんですよ。というか、ただのミーハーですけどね

渡辺 「あの時は、決勝でモリカツ(注6)に負けてしまって優勝はできなかったんですけど、会場でのクイックインタビューの『注目の選手は?』って質問で僕の名前を挙げてくれる人が多かったみたいで、それで世間から注目された感じではありましたね」

佐々木 「渡辺プロは、僕がマジックに復帰した年ちょうどプロの舞台で活躍しはじめたプレイヤーだったんで、すごく思い入れが強いんです。そういえば、その2006年のThe Finalsの時に、会場で『あ、モリカツだ!』って思った選手がいて。当時、モリカツって『クイックシルバー』ってふたつ名でプレイがものすごく早いって有名だったじゃないですか」

渡辺 「ほんと、詳しいですね」

佐々木 「実物を見たことがないので『ゲームぎゃざ』の知識ですけどね。で、会場で対戦を見ていたらものすごくプレイが早い選手がいて……これがあのモリカツだ!って思って後ろから熱い視線を送って観戦してたんですよ。あれ、でもこんな顔だったかな、とか思いながら」

渡辺 「え?モリカツじゃなかったんですか?」

佐々木 「そう、違ったんです。使ってたデッキが、 《工匠の神童、ミシュラ》 が入った変態的なアーティファクトデッキで。これがおもしろい動きをするんですが、なにより対戦相手が追いつけないようなスピードでプレイしていたのが、めちゃくちゃおもしろかったですね」

渡辺 「ん?2006年のThe Finalsで 《工匠の神童、ミシュラ》 デッキ使ってたって……それ、ラッシュ(注7)だったんじゃないですか?」

佐々木 「あとで記事をみて知ったんですけど、ラッシュさんだったんです」

渡辺 「モリカツとラッシュ間違える人って珍しいですよ」

佐々木 「当時は対戦動画もあまりなかったですし、プレイが早いやつ=モリカツみたいな短絡的な勘違いをしました。でもそれがきっかけで、ラッシュさんのデッキや記事のファンになったので、いい思い出です。で、渡辺プロは翌年のグランプリ・京都で見事優勝したわけですが、そこからプロプレイヤーとしてやっていこうと思ったという感じですか?」

渡辺 「いや、その時はそうでもなくて。本格的にプロマジックの世界にハマったのは、京都で権利を獲得したプロツアー・横浜でしたね」

佐々木 「三田村選手が準優勝した横浜(注8)ですね」

渡辺 「そうです。そこで、『あ、このゲーム、面白いな』って」

佐々木 「それまでもめちゃくちゃ勝ちまくっていたのに、ですか?」

渡辺 「そうですけど……はじめてプロツアーに出た時に、『これは今までやってたマジックとレベルが違うぞ』って思って。グランプリ勝ったくらいで調子にのってちゃダメだなってことで、本格的にプロツアーに参戦しようと思ったんです」

佐々木 「プロツアーはそこからずっと?」

渡辺 「そうですね」

佐々木 「ということは、渡辺プロはPTQ(注9)を突破したことないんですか?」

渡辺 「それまでPTQを突破したことはあるんですけど、まだプロツアーには興味がなかったので、いつもの大会の延長という感じで……権利は獲得していたもののプロツアーにはでてなかったんですよね。なので、PTQで権利を獲得してプロツアーにでたことはない、って感じです」

佐々木 「逆にすごいですね、それ。ちなみに、横浜ではなんのデッキを使ってらっしゃったんですか?」

渡辺 「その時は、モリカツが使ってた、4色の 《神秘の指導》 コントロールを使ってましたね。そんなに有名なデッキじゃないんですけど、ベイビースター(注10)ってデッキで……サイドボードに確か変な白いカード入ってたんですよ。名前、なんだったっけな……」
 
Pull from Eternity / 永遠からの引き抜き

佐々木 「あぁ 《永遠からの引き抜き》 じゃないですか?」

渡辺 「え?あ、たしかにそうですけど、すごいですね、佐々木さん。普通、白いカードって言って、いきなり 《永遠からの引き抜き》 の名前はでてこないですよ」

佐々木 「好きなんですよねえ、マジック」
 
●注釈

注2・注3:PWC・LMC

それぞれ神奈川・千葉を中心に関東各地で大会を開催する「超大型」草の根大会。
渡辺雄也はもとより、関東出身の多くのプロプレイヤーを輩出したことで知られる。

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注4:京都のグランプリ

グランプリ京都2007
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtgevent/gpkyo07ja/welcome

PWCで圧倒的な強さを誇り、「草の根の帝王」として知られていた渡辺雄也が 《硫黄の精霊》 の入った青赤イゼットロンで優勝、渡辺のプロキャリアのスタートとなった大会。
 
Demonfire / 悪魔火

決勝戦での超巨大 《悪魔火》 は伝説となっている。

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注5:The Finals

かつて、日本で年末に開催されていた大型大会。99年に当時無名であった斎藤友晴が優勝して以来、若手の登竜門として知られる大会となった。また、2008年以降は店舗大会を突破したプレイヤーが鎬を削る大会形式に変更された。

文中で話題になっているのは2006年末開催のThe Finals06。99年大会のトップ8入賞で名を知られるようになった「帝王」森勝洋が、「草の根の帝王」渡辺雄也を決勝で下し、史上初にして唯一の「日本選手権・The Finals同年制覇」を達成した。

The Finals06(Internet Archive)
http://web.archive.org/web/20100426101943/http://mtg.takaratomy.co.jp/tc/finals/2006/index.html

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注6:モリカツ

森勝洋選手。通称「帝王」。
05世界王者・06/09日本王者をはじめ、数々のタイトルを持つプロプレイヤー。また、00-01シーズンには最優秀新人賞を獲得している。
高いプレイングスキルだけでなく、「モリカツ式」と冠される独創的なデッキチューンでも知られる。多くの練習量に支えられ、メタゲームを的確に判断したデッキ構築やプレイ理論は、多くのプロプレイヤーからの信頼を集めていた。
「ライトニング」や「クイックシルバー」と呼ばれることがあるように、圧倒的なプレイスピードが最大の持ち味。カバレージ上などでも繰り返し記述されている。

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注7:ラッシュ

高橋純也選手。

グランプリ松山2005に若干17歳でトップ8入賞し若手の旗手として注目を集める。
 
Kami of the Hunt / 狩猟の神

その時にドラフトした、 《狩猟の神》 をキーカードとした「赤緑ラッシュ」というアーキタイプから「ラッシュ」の名で呼ばれるようになる。
多くのデッキをうみだしたデッキデザイナーであり、また、ロジカルな解説記事を書くライターとしても有名。

文中で話題となっているのは、以下のデッキ(Internet Archive)
http://web.archive.org/web/20090821062811/http://mtg.takaratomy.co.jp/tc/finals/2006/24_rogue/index.html

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注8:三田村選手が優勝した横浜

プロツアー横浜2007
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtgevent/ptyok07ja/welcome


千葉の草の根大会「LMC」にて圧倒的な強さを誇り「魔界の番人」と呼ばれた三田村和弥選手が自身初のプロツアートップ8入賞を果たし、準決勝で斎藤友晴選手を打ち破り、決勝へと進出した。
決勝の相手となったのは、狂信的青使いとして世界的に有名なGuillaume Wafo-tapa。青黒変異デッキを使用する三田村は、 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 を4枚投入するという独創的な青黒デッキに敗北。Wafo-tapaが自身初タイトル獲得となった。
なお、三田村選手自身も、プロツアーホノルル2009にてプロツアーチャンピオンとなっている。

プロツアーホノルル2009
http://coverage.mtg.ne.jp/pthon09/

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注9:PTQ

ProTourQualify、プロツアー予選の略。
招待制のイベントであるプロツアーへの参加資格を得るには原則的に各地で開催されるPTQに参加し、優勝する必要があった。
広義ではグランプリもPTQに該当し、グランプリ上位者には該当するプロツアーへの参加権利が与えられる。渡辺選手はこの権利獲得と、プロツアー順位、及び獲得したプロポイントでの参加権利だけで継続参戦を続けているため、狭義のPTQを突破したことがない。

なお、PTQのシステムは2014年末から、予備予選と地域予選の二段階の予選を経る形式へと変更されている。

プロツアーへの新たな道
http://mtg-jp.com/publicity/0010851/

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注10:ベイビースター
 
Mystical Teachings / 神秘の指導 Prismatic Lens / 虹色のレンズ Teferi, Mage of Zhalfir / ザルファーの魔道士、テフェリー

「時のらせん」ブロック限定構築で行われたプロツアー横浜2007にて「帝王」森勝洋選手が環境トップメタのひとつであった 《神秘の指導》 を使用した青黒タッチ赤コントロールを独自のチューニングをしたもの。
《神秘の指導》 の持つ「サーチによる汎用性」「フラッシュバックによるアドバンテージ」という2つの特徴を最大限に発揮しつつ、 《虹色のレンズ》 によって事実上赤以外の色もタッチ可能であることに目をつけ、サイドボードに5色14種類のカード(サイドボードは15枚まで)を用意し、あらゆるデッキに対処できることを目指して構築された「理論上最強デッキ」であり、多種多様なデッキの存在した「時のらせん」ブロック限定構築を象徴するかのようなデッキ。

文中で話題となっている 《永遠からの引き抜き》 は、待機カード、特に当時多くのデッキに入っており青系デッキ対決で決め手となる 《永劫の年代史家》 に対処できる数少ないカードであり、ベイビースターが5色化するきっかけを与えたカードではあるが、ベイビースターを使用したプレイヤーの成績が振るわなかったため、デッキリストが公開されず、このデッキに 《永遠からの引き抜き》 が入っていたことはほぼ知られていない。そのため、ここで 《永遠からの引き抜き》 の名前がでたことに渡辺選手は驚いた。
なお、トップ8入賞し、準々決勝で大礒正嗣選手に敗北したMark Herberholz選手が使用していた青黒タッチ白の形で構築された 《神秘の指導》 デッキにはメイン・サイドに 《永遠からの引き抜き》 が採用されていたため、こちらが念頭にあった可能性もあるが、どちらにしろプロを驚かせるマニアックな知識である。

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■マジックのプロプレイヤーとはなにか?


佐々木 「じゃあ、そこからは、もう、マジックのプロとして食っていこうって感じだったんですか?」

渡辺 「いや、もう一段階ありますね。実際、プロツアーに参戦しはじめたころは、僕も全然若かったこともあって『まぁ、なんとでもなるだろう』みたいな感じでやっていた部分もあるんですよ。本当に『マジックのプロだ!』って腹をくくったのは、2009年シーズンが終わった後ですね」

佐々木 「2009年というとPlayer of the Year(注11)を獲得した年ですね」

渡辺 「そうですね。僕が獲得した時点ですでに日本人は4年連続でPoYを獲得していた(津村建志選手(注12)・八十岡翔太選手(注13)・齋藤友晴選手(注14)・中村修平選手(注15))んですけど、その時には、4人とも、前の年から始まった殿堂を目指していたんですよね。で、僕もその4人に続いてPoYを獲得したからには殿堂を目指そうって考えたんです

佐々木 「結果をだしたことで、プロとしての意識が変わっていったってことですか?」

渡辺 「うーん……そういうことになるんですかね。あ、そういう意味で言うと、ちょっと話の順序が違いましたね。僕、その翌年、PoYという結果を出したことで慢心というか油断というか、そういう状態になっちゃって、当時のプロプレイヤークラブ(注16)の最高レベルから落ちてしまったんですよね。で、PoYっていう結果で満足してたら自分はどんどん弱くなってしまうと思って、殿堂を目標にすることにしたっていうのはあります」

佐々木 「そこからは最高レベルを維持し続けているわけですよね」

渡辺 「そうですね。それからはマジックでは絶対手を抜かないことにしてます



佐々木 「今回、渡辺プロと対談をするということで、渡辺プロに聞いてみたかった質問があるんですけど、いいですか?」

渡辺 「なんですか?」

佐々木 「渡辺プロにとって、『マジックのプロプレイヤー』ってなんでしょうか?

渡辺 「うーん、難しい質問ですね……結構、人によって色々な定義はあると思うんですけど……僕はとにかく勝つこと、勝って結果を出すことっていうのはプロの最低条件だと思ってます」

佐々木 「勝ち続けて、プロプレイヤークラブの最高レベルを維持し、殿堂入り(注17)をするってことですか?」

渡辺 「そうですね。今は、そう考えてマジックに生活を捧げてますね」

佐々木 「結果を出すのはプロとして最低条件だと思うんですが、僕はさらにその“先”を渡辺プロに期待しているんです

渡辺 「その先ですか?」

佐々木 「殿堂入りというのは、ウィザーズ社が作ったシステムの上で評価されている、ということだと思うのですが、そのうえでさらに『プロとしての価値』を生むことができるんじゃないかと思うんですよね」

渡辺 「例えば、僕がMINTさんにスポンサードされているというような形ですか?」

佐々木 「MINTさんでは、渡辺プロのトークンを作成していますよね? あれはいいアイデアと思います」

渡辺 「そうですね。かなり人気があるみたいで、ありがたい話です」

佐々木 「例えばスポーツの世界でも、特定の選手がプロデュースしたアイテムや、選手名そのものがブランドになった商品があります。もっとも成功した例では『エアジョーダン』が有名ですよね」

渡辺 「そうですね」

佐々木 「それと同じようなことが、渡辺プロにはできると思うんですよね。『世界中を旅する渡辺雄也がプロデュースしたデッキキャリングケース』のような商品などは説得力がありますから、ありえると思うんですよ」

渡辺 「いや、それはさすがに誰も買わないんじゃないですか?」

佐々木 「どんな有名人でも、名前だけではもちろん売れません。大事なのは、そこに物語や説得力を感じられるか、だと思います。渡辺プロの経験を生した商品なら、買う人はかなりいるんじゃないかなあ」

渡辺 「うーん、僕のモデルのデッキキャリングケースってだけでそんなに価値がありますかね?」


佐々木 「それだけじゃないですよ。例えば……『渡辺雄也と行く海外グランプリツアー』とかどうですかね?上海やシンガポールあたりのグランプリに参加したいと思いつつ、二の足を踏んでいるプレイヤーもいると思いますが、MINTさんあたりが代理店になってめんどうな手続きを全部やってくれて、大会前日には渡辺プロと一緒に夕飯を食べながらドラフトのテクニックについて講義があったりすれば、自分なら参加したいですね」

渡辺 「それはちょっとおもしろそうですけど、そんなツアー、人が来るんですかね?」

佐々木 「だから、来るんですって」
 
●注釈

注11:Player of the Year

年間最優秀選手。プロツアー、及びグランプリ参加者に順位によって与えられるプロポイントを年間で最も獲得した選手に与えられる賞。略してPoYとも。
文中にあるように過去に日本人プレイヤーでは5人が獲得している。2005年の津村選手から2009年の渡辺選手まで、5年連続で日本人プレイヤーがPoYを獲得しており、この時期を日本プロマジックの黄金期として見る観戦者も多い。

なお、その年初めてプロツアーに参戦したプレイヤーの中で最もプロポイントを獲得したプレイヤーにはRookie of the Year(最優秀新人賞)が与えられる。過去に日本人プレイヤーでルーキーを獲得したのは3名おり、渡辺雄也選手も2007年に獲得している。

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注12:津村建志選手

2005年Player of the Year獲得。2012年マジック殿堂選出。通称「コガモ」。

04年日本戦選手権にて、直前予選から、準優勝による代表入りを果たし、一躍有名プレイヤーとなる。プロツアートップ8入賞6回は大礒選手と並んで日本人トップタイ。
そのマジックに対して真摯で紳士なプレイスタイルには、国内外を問わず多くのファンがいる。その真摯さは「相手のケアレスミスで勝っても意味が無い」と、 《否定の契約》 に代表される契約系呪文でのコスト支払い忘れによる敗北が発生する前に対戦相手にコストの支払いを指摘するほど。
また、公式記事連載による構築環境分析記事には定評があり、国内屈指のライターとしてもコミュニティへの貢献を行っている。

現在は「Hareruya Pros」に所属している。

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注13:八十岡翔太選手

2006年Player of the Year獲得。2015年マジック殿堂選出。通称「鬼神」「ヤソ」。

古くから関東草の根では名の通ったプレイヤーであったが、2005年世界選手権での好成績でプロツアー参戦資格を得たことから、2006年シーズンはプロツアーに継続参戦。プロツアーチャールストン2006を斎藤選手・鍛冶選手とのチーム「kajiharu80」で優勝したことも含め、当該シーズンの最優秀選手となった。その後もプロツアーへの参戦を続ける一方で2009年はマジックのネットゲーム、MagicOnlineに傾倒し、その年新設されたMagicOnline上でのPlayer of the Yearを獲得した。2015年現在で両最優秀選手獲得者は八十岡選手ひとり。
「カウンター」と「火力(直接ダメージ)」というマジックでも最も汎用性の高い2種類の呪文を敬愛し、これらのどちらか、もしくは両方をもっともうまく活用できる独自構築のデッキでプロツアーに参戦することが多く、コントロールデッキ嫌いでも、ファンにさせるだけの魅力的なプレイとデッキで国内外にファンが多い。
また、過去に公式サイトで掲載されていた「スタンダードウォッチング」における独自の視点からのメタゲーム分析・デッキ分析は記事掲載ごとに反響を呼ぶことでしられる。

現在は「Hareruya Pros」に所属している。

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注14:齋藤友晴選手

2007年Player of the Year獲得。通称「ストンピーの貴公子」「トモハル」。

99年のThe Finals優勝で世間に名を知られ、その後、プロツアートップ8入賞5回を含む日本人屈指の成績を残すトッププレイヤーとなった。プロキャリア初期は特に鍛冶友浩選手とのチーム戦での活躍が顕著であり、2005年はプロツアーアトランタを津村選手と、2006年はプロツアーチャールストンを八十岡選手と、ともにトップ4入賞を果たしており、3人めチームメイトの最優秀選手賞獲得に貢献している。また、本人も翌2007年は、文中でも話題となったプロツアー横浜2007トップ4入賞を含む好成績によって最優秀選手賞を獲得している。
常に自作のデッキにこだわり続けたことによって磨かれたデッキビルダーとしての腕は世界でも屈指であり、特にビートダウンやクロックパーミッションと言ったダメージソースを用意し相手の選択肢を狭めるタイプのデッキをプレイ・構築ともに好む傾向がある。また、構築されたデッキ理論の開示にも意欲的で、グランプリシンガポール優勝直後には自身の構築したデッキの理論をすべて開示し、その上で、翌週のグランプリ神戸をメタゲームの変化に合わせてチューンしたバージョンで優勝という離れ業をやってのけている。
日本最大のマジック専門店「晴れる屋トーナメントセンター」を内包する、「晴れる屋」のオーナー。「晴れる屋」開店にまつわるエピソードについては下記記事を参照。

晴れる屋トーナメントセンターに寄せて。
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/1036

現在は自身の主宰する「Hareruya Pros」に所属している。

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注15:中村修平選手

2008年Player of the Year獲得。2011年マジック殿堂選出。通称「なかしゅー」。

プロツアー初トップ8入賞を果たしたプロツアーコロンバス04から、最優秀賞獲得の08年まで5年連続でプロツアートップ8入賞を果たすなど、アベレージの高い成績を残し続けるプロプレイヤー。また、アベレージだけでなく、大会参戦回数はダントツであり、参加した大会数と勝利数が計上されるプレインズウォーカーポイントにおいては、圧倒的大差で世界一となっている。
また、殿堂顕彰までは世界各地の大会に参戦する「ロードウォーリアー」として有名であり、世界中のコミュニティと交流を持っている。世界最強チームと言われるChannel Fireballとのコネクションを強く持つプレイヤーは現在、日本人では中村選手一人である。世界のトーナメント事情と名所を紹介した公式サイトでのマジック旅行記は、マジックの持つ多くの魅力を伝える記事として幅広いファンを持つ。
世界のコミュニティと交流する一方で、日本人プロプレイヤーの世界進出へのサポートに精力的であり、プロツアー初参加プレイヤーにかぎらず、一時期はほとんどのプレイヤーの旅程を管理し、海外進出を助けた。

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注16:プロプレイヤークラブ

年間に獲得したプロポイントに応じて、プロツアー参加権や旅券・宿泊施設・参加報酬などが支払われるシステム。
何度かのシステム変更を経て、現在はプラチナ・ゴールド・シルバーの三段階制となっている。渡辺選手が現在獲得しているプラチナレベルプロは、プロツアー参加報酬3000ドルを始めとしたかなりの優遇処置がとられている。
文中で渡辺選手が語っている「当時の」プロプレイヤークラブは、レベル1からレベル8までの8レベル制をとっており、この年、渡辺選手はレベル7だった。

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注17:殿堂入り

2005年にマジック10周年を記念して設立されたプロツアー・マジック殿堂のこと。
生涯獲得プロポイントが250点以上であり、プロツアー初参戦から10年以上たった選手が殿堂選出投票の対象となり、マジック有識者で構成される投票委員会と、生涯獲得プロポイント100点以上のプレイヤーで構成されるプレイヤー委員会からの得票数を40%以上獲得することで選出される。
日本人では過去に6名が殿堂顕彰されている。

渡辺選手は06-07新人賞を獲得しているように、まだ選出対象となるためのプロツアー参戦10年が達成されていないため、資格を持っていない。

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■メディアとなった渡辺雄也



佐々木 「こんな話も、10年前だったらできなかったと思うんですよね」

渡辺 「10年前の僕じゃ、無理だったでしょうね。まだ、プロツアーにでてなかったですし」

佐々木 「いや、渡辺プロだけの話ではなくて、ネットを活用したセルフブランディングって10年前にはまだ十分に実現できなかったんですよ。でも今は時代が変わって、メディア化している個人がたくさんいます。そういうことが以前より簡単にできるようになったんですね」

渡辺 「僕自身がメディアになる、ってどういうことですか?例えば、僕が記事を書くとかそういうことですかね?」

佐々木 「そうですね。いま渡辺プロは、ご自身ではあまり積極的に情報発信をされていませんが、記事をたくさん書いたりしていくと、かなり違った景色が拓けるんじゃないかなと思っています。というかそもそも、僕が単純にすごく読みたいです(笑)」

渡辺 「うーん……今は、あまり記事は書かない(注18)んですよね。文章書くのって、僕の場合、すごい時間がかかってしまって、練習の時間が大きく減っちゃうんで厳しいんですよね。僕は練習しないと自分が勝てないタイプだと思っているので。ただ、聞いてもらって答えるとかならそこまで負担でもないので、そういう形でインタビューしたものをまとめてくれる人がいるなら、いくらでも記事は書くんですけどねぇ」

--いや、僕はやりませんよ(笑)

佐々木 「いや、読みたいですし、出すべきですよ。渡辺プロのジャンルを超えた本当の強さは、マジック以外の分野にも役立つものだと思いますよ」

渡辺 「格闘ゲームプレイヤーのウメハラさん(注19)の本みたいな感じですか?」

佐々木 「まさにそうです。そういった活躍の場を広げることで、渡辺プロ自身がメディアになってもっとおもしろいことができるようになると思うんですよね」

渡辺 「僕自身がメディアになる、っていうのは、もっと僕がメディアに露出していくべきだ、ってことなんですか?」

佐々木 「そうではなく、渡辺プロ自身がさまざまな可能性のハブになって、いろんな物事をつなげていける、ということなんですよ。例えば、『神の雫』(注20)というワインの漫画がありますよね」

渡辺 「名前は聞いたことがあります」

佐々木 「あの漫画を通じて、実際にレストランに足を運んだり、ワイナリーを訪ねたり、ソムリエの資格に興味を持ったりする人が大勢うまれたわけですが、その求心力の源はあの作品だったわけですよね」

渡辺 「マンガを読むことで、ワインへの興味という体験を得たわけですね」

佐々木 「つまり、渡辺プロを通じて、商品を購入したり、アジアのグランプリに参加したり、あるいはマジックというゲームを知ったり、という人を生み出すことができると思うんですよね」

渡辺 「それが、僕自身がメディアとなる、という意味なんですね」

佐々木 「そうです。それが渡辺プロが持っている可能性ですし、ぜひチャレンジして頂きたいと思っていることなんです」

渡辺 「なるほど……僕としてはどれくらいそれができるのか、まだ実感できてないんですよね。マジック業界の中でも、特にプロシーンの中にいるので、その外にいる人達がプロプレイヤーを、僕をどういう風に見ているのか、っていうのがわからないんですよ。ただ、自分が思っているよりもいつの間にか大きくなっていたなということだけは理解しているんですが……プロからの僕への評価、以外が正確にはわからないですね」

佐々木 「今現在、マジックを知らない人が、いざ渡辺雄也という人物を調べようと思った時に、それが端的にわかるプロモーション用のページってないんですよね」

渡辺 「MTG Wiki(注21)の僕のページじゃダメなんですか?」

佐々木 「もちろん、大会の成績などの情報を得ることはできますけど、ちょっとそっけないというか、すごさがよく伝わらないですよね。ちなみに、NAVERまとめの渡辺プロのページあるじゃないですか。実はあれ、僕が作ったんですよ」

渡辺 「そうなんですか?」

佐々木 「渡辺プロが、マジックとメディアの歴史を変える人なんじゃないかと思って、それなら渡辺プロについて知ってもらうページが必要だと考えて作ったんですよ。でも、一番いいのは、ブログですよ。渡辺プロ、どうでしょう。LINE BLOGを始めていただけないでしょうか?」

渡辺 「え?急に!?」

佐々木 「今日はそのために来ました(笑)」

渡辺 「僕の名前を使ってLINE BLOGをやることがマジックのためになるのであれば、ぜひにと言いたいところなんですが……文章書くと、練習時間にもろに影響するんですよねぇ……」

佐々木 「負担が少ない方法を考えますので、ぜひ前向きに考えていただきたいです!」
 
●注釈

注18:あまり記事は書かない

現在はほとんど記事を書いていない渡辺選手ではあるが、日本語公式サイトであるmtg-jp.comでは、2010年からリミテッドの週刊連載をしていた。
当初はリミテッドで使用できるコンボを紹介する記事がメインだったが、渡辺選手がトーナメントに参加した後の週には「実践編」としてそのトーナメントでのドラフトピックなどについて語られる、今となっては貴重な渡辺選手のトーナメントレポート記事となっていた。
2012年からは季刊となり、そのまま連載は終了した。現在は、渡辺選手の戦略論などが読めるのはカバレージなどでのインタビューがほとんどとなっている。

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注19:格闘ゲームプレイヤーのウメハラさん

プロ・ゲーマー7の梅原大吾氏のこと。2D対戦型格闘ゲームにおいて数々の戦績を残す著名なプレイヤーであり、2004年Evolutionにおける『背水の逆転劇』の動画は特にネット上で有名。
2012年に初著作となる『勝ち続ける意志力: 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』を出版し話題に。その後も継続的に著作を出版している。

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注20:神の雫

原作:亜樹直、作画:オキモト・シュウによる漫画。2004年から『モーニング』誌上で連載。
主人公、神咲雫とヒロインであるソムリエ見習い紫野原 みやびが、雫の父が遺言に残した『十二使徒』とよばれるワインとその頂点に立つ『神の雫』の謎を解き明かしていく物語。
豊富なワイン知識に裏付けされた物語展開はワインブームの火付け役となった。

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注21:MTGWiki

MTGWiki
http://mtgwiki.com/wiki/

有志による更新で、マジックに関する知識が網羅的にまとめられたマジック版Wikipedia。管理者はwisdom-guildを運営するleon氏。

歴史の長いサイトであり、各カードに関するページはもちろん、デッキの歴史やトーナメント記録、著名なプレイヤーや関係者など圧倒的情報量を誇る。
日本におけるTCG系Wikiの先駆け的存在であり、他TCGのWikiは多かれ少なかれMTGWikiの影響を受けていると言っていいだろう。

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■渡辺プロのプロプレイヤー生活



佐々木 「最近、麻雀プロがオンラインでレッスンしてくれるサービスなんかが話題になっているのですが、MagicOnlineでのプレイを渡辺プロに見てもらいながらレッスンを1時間受けられる、みたいなサービスはどうでしょう。あったら受けてみたいなあ」

渡辺 「いや、佐々木さん、それは本当に無理です。無理とまで言わなくても相当難しいと思います」

佐々木 「そうですか?」

渡辺 「さっきも少し言いましたが、僕、本当にマジックに関してだけは妥協ができないんです。プレイに関しても正解であるかどうかを突き詰めてしかプレイができないので、レッスンみたいな形で人のプレイをみることは、とりあえず現役の今では絶対に無理じゃないかと思います」

佐々木 「相手のレベルに合わせたプレイを指導するのが難しい、ってことですか」

渡辺 「そうです。マジックには必ず正解のプレイがあると思うので、それ以外のプレイを許容することができないんです。なんで、行弘(注22)とかとは、プレイについてすごい揉めて喧嘩になったりすることもよくあります」

佐々木 「そのストイックさが渡辺プロの強さなんですね。先ほど、練習時間のことをおっしゃってましたが、渡辺プロはどれくらい練習するのですか?」

渡辺 「イベント前は、一日10時間以上はやるようにしています。プロツアー前は、今はMagicOnlineでリリースされてから練習では間に合わないので、仲間と面と向かってやりますね。グランプリ前は基本的にMagicOnlineで練習してますね」

佐々木 「ちなみに、渡辺プロは、練習は質と量、どちらが大事にされていますか?

渡辺僕は間違いなく量ですね。とにかく、出来る限りの量をやることが、自分のプレイが正しいと自信を持ってプレイするために重要だと考えてます。ただ、あまり根を詰めてやりすぎても集中力が途切れてしまうので、適度に休息をするのも重要ですね。今のプロは量のほうが大事だと考えている人の方が多いんじゃないですかね。瀬畑くん(注23)なんかは、社会人ながら一日2時間睡眠で練習時間を確保したりと命削りながらマジックやってますよね」

佐々木 「そう考えると、渡辺プロは見た目かなり健康そうですよね」

渡辺 「いや、でもプロツアー前は2~3㎏は痩せますよ。ホント、プレイしてる時以外もずっとマジックのことを考えている生活なので。ただ、プロツアーが終わると食べ過ぎてすぐ体重が元に戻るんですけどね」

佐々木 「なるほど。ちなみに、今(注:この対談は6月中旬に行われました)みたいに、プロツアーとプロツアーの合間で、グランプリも無い時は、練習はしないのですか?」

渡辺 「今は……モダンマスターズのリミテッドの練習をMagicOnlineでやってますね。もう50回以上ドラフトしてます」

佐々木 「え?グランプリ・千葉(注24)が終わったのに、ですか?なにかモダンマスターズ(注25)のイベントありましたっけ?」

渡辺 「無いんですけど……世界選手権(注26)でモダンマスターズがフォーマットとして採用されるんじゃないかって思ってるんですよね。毎年、ひとつは特殊なフォーマットが採用されるので、今年はモダマスじゃないかと。世界選手権はフォーマットが多すぎて練習時間がかかりすぎて、いつもすごいつらいんですよね。なので、オフシーズン中にできることはやっておきたいんです」

佐々木 「そのためにそれだけ練習するって、本当にすごいですね。それって、次の段階のテクニックを探すための練習なんですか?」

渡辺 「そうですね。グランプリ・千葉の時は、参加者全体の習熟度がそこまで高くないだろうと予測できたので、最も強い戦略を安定してピックする方法を練習していたんですが、大型イベントも終わりましたし、何より世界選手権はスター級のプレイヤーしかいないので、すでに情報が共有されきった環境でどう勝つかという練習をしてます。具体的には弱いと言われているアーキタイプ……白黒スピリットや赤白装備(注27)をどうやって強くするか、勝てるようにするかという方法を探してますね」

佐々木 「環境の理解度の高さがすごいレベルですよね。ところで、渡辺プロは、構築とリミテッドだとどちらが好きなんですか?」

渡辺 「昔は構築でしたけど、今は完全にリミテッドですね。もともとは苦手種目だったんですけど、それを克服するべく練習して、量をこなしていくウチに、マジックに対する考え方そのものがかわったんですよ

佐々木 「リミテッドとの出会いがマジック観を変えた、と」

渡辺 「そうですね。リミテッドの方がマジックというゲームそのものについて考えなければいけない部分が多いんですよ。なので、ドラフトで勝つためにどうすればいいか、という考え続けることで、結果的にマジックというゲームそのものへの理解度がものすごくあがったんですよ。構築だとどうしても、そのデッキで、その環境で勝つためにはどうすればいいか、という所から抜けだして理解度を上げることが僕の場合はあまりできなかったので。リミテッドを強くなろうという経験が理解度をあげてくれてますし、今も、さらに強くなりたいので、リミテッドのほうが好きですね」

佐々木 「マジックで強くなりたければリミテッドをやれ、と。なんかそういうマジック格言みたいなのもっと集めてみたいですね。基本、ミーハーなので、そういったプロの格言を集めたり、名作デッキをコピーしたりとかよくやっているんですよ(笑)。昨年の世界選手権で使用されたジェスカイトークン(注28)も、(フェッチランド以外)はフルFoilで揃えました」


渡辺 「それはうれしいです。今日は、これまでの僕のデッキを、その当時のカードを探し出してきて持ってきましたよ。イゼットロン(注29)と青白ヒバリ(注30)とサムライデルバー(注31)を持ってきたので、後で対戦しましょう!」

佐々木 「どれも渡辺プロの代名詞みたいなデッキじゃないですか!!そんな贅沢なことしてもらっちゃっていいんですか!!」

渡辺 「そんなに喜んで貰えると嬉しいですね」

佐々木 「偉そうな話もしちゃいましたが、基本、ただのファンなんですよ」


マジックファンであることを公言しつつも、渡辺にマジックのトッププロが果たすことができる役割を語った、佐々木。

後編では、マジックにおけるメディアの重要性、そして、ふたりのマジックと仕事のルーツに迫ります。

渡辺雄也・佐々木大輔特別対談:メディアとしてのプロプレイヤー(後編)
 

●注釈

注22:行弘

行弘賢選手。通称「ユクヒロ」「ケンちゃん」。
プロツアー「アヴァシンの帰還」 ベスト4。
独自のデッキ構築理論によって組み上げられる個性的なデッキによって知られるが、高いリミテッドスキルによって多くのプレイヤーから信頼を得るプロプレイヤー。
日本人プロの中でもかなり最初期に「ニコニコ生放送」による配信を行っており、また、様々な媒体に記事を寄稿するなど、メディア展開に積極的なプレイヤーとしてもしられる。
Dig.cardsプロ所属。

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注23:瀬畑くん

市川ユウキ選手。通称である「瀬畑」は「ニコニコ生放送」のアカウント名。
元々、「ニコニコ生放送」での人気生主だったが、配信当時からMagicOnline上ではかなり高い勝率を誇っており、アカウントである「Triosk」が記されたデッキリストが数多く公式サイトに掲載されていることから、一部のプレイヤーから注目されていた。
リアルマジックを開始すると、グランプリサイドイベントであるレガシー選手権2連覇を始めとして、2大会連続でのプロツアートップ8入賞など輝かしい戦績で瞬く間に最高位であるプラチナレベルプロにまで上り詰めた。
プレイング、デッキ構築ともに、合理性の無い考え方を嫌い、より適切な応えが無いかと突き詰め続けるそのスタイルにはファンも多い。

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注24:グランプリ千葉

グランプリ千葉2015
http://coverage.mtg-jp.com/gpchi15/

4000人を超える参加予約者によって日本史上最大のグランプリとなった。
また、モダンマスターズというお祭り要素の高いパックを使用したグランプリであったため、日本・アメリカ・ヨーロッパの3会場同日開催と時差を利用した52時間連続生放送はマジックコミュニティを超えて話題となった。

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注25:モダンマスターズ

正確にはモダンマスターズ2015。

新枠のカードのみが使用できるレギュレーションである「モダン」で使用できるカードが再録された特殊なエキスパンション。
「モダン」環境における資産格差の解消だけでなく、過去の様々なブロックやカードのギミック同士がシナジーを起こすリミテッド環境は、前作の「モダンマスターズ」同様に非常に評価が高く、構築をやらないプレイヤーからも歓迎された。

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注26:世界選手権

例年、ひとつは特殊なフォーマットが採用される世界選手権。
2015年シーズンの世界選手権では渡辺選手の予選が的中し、モダンマスターズ2015によるリミテッドが行われた。

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注27:白黒スピリットや赤白装備

白黒スピリットは、神河ブロックのギミックであるスピリットを回収する「転生」や、スピリットクラフトと呼ばれるスピリット召喚時にトリガーする能力と、ローウィンの多相や、歴代各種スピリットを組み合わせたデッキ。
赤白装備は、赤と白のカラーパイである二段攻撃を持った歴代のクリーチャーと、パワーを挙げる装備品やオーラを組み合わせて圧倒的な打点を生み出すデッキ。
このように、セット内に散りばめられたコンセプトにあわせてピックしデッキを構築するドラフト方法をアーキタイプドラフトと呼び、モダンマスターズシリーズでは恒例となっている。

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注28:ジェスカイトークン
 
Hordeling Outburst / 軍族童の突発 Treasure Cruise / 宝船の巡航 Jeskai Ascendancy / ジェスカイの隆盛

世界選手権2014
http://coverage.mtg-jp.com/mtgwc14/

非クリーチャー呪文を使用すると、手札整理をしつつクリーチャーの全体強化をする 《ジェスカイの隆盛》 のポテンシャルを最大限に発揮するべく、トークン生成呪文を多用し、打点と安定性を両立させたデッキ。勝利手段が呪文によって生みだされるトークンであることと、カードを捨てる 《ジェスカイの隆盛》 の特性から墓地が大量に増えるため、アドバンテージソースとして 《宝船の巡航》 を使用している。
世界選手権会場では、並み居る世界中のトッププロを唸らせた。また、直前に調整として参戦し、トップ8入賞したBigMagicOpenでは、デッキの手応えから世界選手権に向けた情報戦略として賞金権利の法規と引き換えにリスト非公開を選択したことも話題となった。
渡辺選手自身も自信作であり好きなデッキと語り、2014年末に開催されたThe LastSunでのインタビューでは「2014年で一番印象的な構築デッキ」としてこのデッキの名前を挙げている。

プラチナプレイヤーインタビュー: 渡辺 雄也
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/237

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注29:イゼットロン
 
Urza's Tower / ウルザの塔 Demonfire / 悪魔火 Sulfur Elemental / 硫黄の精霊

グランプリ京都2007
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtgevent/gpkyo07ja/welcome

渡辺選手初優勝となったグランプリ京都2007で使用していたデッキ。渡辺選手の「青赤系好き」キャラの原点ともなっている。
《ウルザの塔》 《ウルザの魔力炉》 《ウルザの鉱山》 の3種類揃うと複数マナが出る土地、通称ウルザトロンによる圧倒的なマナベースを背景に、重量級クリーチャーである 《ボガーダンのヘルカイト》 や、X呪文である 《悪魔火》 《呪文の噴出》 などで盤面をコントロールする。
ウルザトロンが揃うまでは、軽量火力やカウンターでしのぎつつ、各種印鑑でマナベースを整えたりドロー呪文でウルザトロンを揃える動きが主となる。
苦手としていた高速ビートである白ウィニー対策となる 《硫黄の精霊》 入りの優勝デッキが渡辺選手のデッキとして有名だが、実は前年に準優勝したThe Finals06でも使用していた様に、長期間使い込んできたデッキである。

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注30:青白ヒバリ
 
Reveillark / 目覚ましヒバリ Momentary Blink / 一瞬の瞬き Ponder / 思案

日本選手権2008
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/jpnat08/welcome-ja

戦場を離れた時にパワー2以下のクリーチャーを2体墓地からバトルゾーンに戻す 《目覚ましヒバリ》 をキーカードに、獲得できるアドバンテージを最大化する 《熟考漂い》 や、 《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》 《造物の学者、ヴェンセール》 といった盤面の優位に還元するバウンスクリーチャーなどを投入し、優位を確立しつつそれらのクリーチャーでアタックしていくコントロールデッキ。
《大いなるガルガドン》 《影武者》 による無限コンボを内蔵したタイプなども存在した(同大会でトップ8入賞した三原選手が使用していたのがこのタイプ)が、戦場に出た時・離れた時の能力を持ったクリーチャーが多いことを踏まえた 《一瞬の瞬き》 を使用したヒバリブリンクと呼ばれるタイプが当時は主流となっており、渡辺選手が使用したのもこのタイプであった。
カウンターを使用するタイプが多かった中、渡辺選手はカウンターを 《否定の契約》 2枚のみに止め、代わりにクリーチャーとマナアーティファクトを通常より多く投入したタイプを使用していた。また数少ない呪文枠に 《思案》 が4枚採用されており、渡辺選手が 《思案》 好きとなるきっかけとなった。
なお、この時、同型対決だった大礒選手との準決勝を「完全にプレイの差で確実に負け、自分がまだまだ向上しなければいけないことに気がついた対戦」と自身の転機と位置づけている。

Semifinals : 渡辺 雄也(神奈川) vs. 大礒 正嗣(長野)
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/jpnat08/welcome-ja#10

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注31:サムライデルバー
 
Delver of Secrets / 秘密を掘り下げる者 Runechanter's Pike / ルーン唱えの長槍 Gitaxian Probe / ギタクシア派の調査

グランプリクアラルンプール2012
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/gpkl12/welcome

グランプリマニラ2012
http://archive.wizards.com/Magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/gpmla12/welcome

1マナにしてパワー3の飛行という圧倒的なスペックを誇る 《秘密を掘り下げる者》 で最序盤に優位を築き、青と白の優秀な呪文でその優位を守ることを目的としたいわゆるクロックパーミッションデッキ。
『アヴァシンの帰還』発売前にすでにこの青白デルバーでグランプリクアラルンプール2012を優勝していた渡辺選手だったが、『アヴァシンの帰還』発売後に 《ルーン唱えの長槍》 の採用などによる 《ギタクシア派の調査》 の投入によって1マナドローが増えたことから、デッキ最大の負けパターンであるマナフラッドを防ぐべく土地の枚数を19枚まで削ったデッキでグランプリマニラ2012を優勝、その研ぎ澄まされた構成枚数から敬意を持って「サムライデルバー」と国内外で呼ばれるようになった。渡辺選手のデッキチューニング能力の高さを象徴するデッキとして知られている。
この時期に 《秘密を掘り下げる者》 で圧倒的な戦績を残したことで「デルバーのカードを禁止にするか、渡辺を禁止にするか」と言われていたのは有名なエピソード。
なお、マニラを優勝したサムライデルバーに関しては公式サイトにて渡辺選手自身が寄稿した調整期が掲載されている。渡辺選手自身が自作の構築デッキについて語るのは珍しく、そういう意味でも貴重な記事となっている。

第67回:渡辺雄也のデッキ構築劇場・約束された勝利のデッキ
http://mtg-jp.com/reading/gekijo/003525/

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