企画記事

「J-SPEED」原根健太のGP京都レポート:直前準備編

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Dig.cardsをご利用の皆様、初めまして。

この度、本稿掲載の機会をいただきました原根 健太ともうします。

先日の公式放送でも紹介に与りましたが、J-SPEEDの名で知っていただいている方もいらっしゃるかもしれません。

始めに自己紹介させていただきますと、子供の頃からカードゲームが好きで、ちょくちょく間を空けながらも通算すれば10年近くTCGをプレイして来た、大のTCG好きです。

中学生の頃にプレイした「Duel Masters」の公式大会がきっかけでトーナメントシーンに興味を持ち、今はもうなくなってしまいましたが賞金制カードゲーム「Dimension-Zero」への移行を機に、競技的な取り組みをTCG活動の中心に据えてきました。

「Dimension-Zero」にて日本一に相当するタイトルを獲得した後、同ゲームの賞金制度廃止に伴い「遊戯王」に移行。日本一を経験したのだから次は世界一を目指そうと言う事で、世界大会を目標に掲げここでもまた競技的な取り組みに没頭。残念ながらその達成に至ることはできなかったのですが、トーナメント活動やその過程を記したブログの執筆を通し、少しばかり名を知っていただくきっかけとなりました。

マジックを本格的にスタートしたのは約半年ほど前で、『タルキール覇王譚』のリリースに合わせて参入を決めました。
マジックに魅力を感じた最大の要因は「公式主催のビッグイベントが年間で多数提供されていること」です。
兎にも角にもトーナメントプレイが大好きな僕はグランプリやプロツアーのようなビッグイベントを愛していて、日頃の練習や掲げる目標もそれに向けたものでありたいと言う思いを強く持っています。
 
マジック公式ニコニコ生放送


この点においてマジックは最高です。公式放送カバレージと言ったコンテンツの提供がイベント感を大切にしてくれていますし、1年を通して盛り上がりに事欠かないためモチベーションを高く保つことができます。

また社会人を続けながらゲームをプレイする僕にとって、賞金制度のような、時間投資に対する明確なリターンが存在することも大きなポイントです。
そして、プロツアー・プロプレイヤーズクラブ・世界選手権などなど、目指せば目指した分だけ上の世界が広がっており、常にステップアップを考えられるのも競技プレイヤーにとってはたまらない環境だと思っています。

少し長くなりましたが、僕がどんな人間なのかは知っていただけたかと思います。
それでは、今回の本題であるグランプリ京都2015のイベントレポートをお届けします!

■レガシーグランプリへの挑戦

日本国内初となるレガシーグランプリの開催。

今大会への参加は開催が告知された時点で決めていました。

自己紹介にもあるように、僕のTCGでの関心が大型トーナメントにあることも理由としては大きいですが、最大の理由は、僕がマジックを始めるにあたり定めた目標にあります。

口にするのも躊躇われるような恥ずかしい話なのですが、僕は将来的に「プロツアーで活躍すること」を目標としています。
 
市川ユウキ

ちょうど僕がマジックを始めようと考えていた頃、プロツアーシーンで目覚ましい活躍を遂げていた市川ユウキプロの影響を強く受けた格好で、いつか自分もあの舞台で立派に戦ってみたいと強い憧れを抱きました。

その気持ちに突き動かされ競技マジックの道へと踏み込んだまでは良いのですが、0地点からのスタートでいきなりプロツアーの舞台を目指すなど現実感が無さ過ぎます。ステップアップの手順を考え、まずマジックと言うゲームの地力を磨くところからスタートすることにしました。その手段として選んだのが、グランプリをベースとしたトーナメント活動です。

あらゆるフォーマットで開催されるグランプリはマジックにおける総合力を身に付けるに相応しい場だと思っていて、それは複合フォーマットで競われるプロツアーでも必要不可欠なスキルであると認識しています。

また1発勝負となる大きなイベントに向けての練習方法や心構え、当日の雰囲気に対する場馴れなど、ゲームの外でも身に付けておきたい要素が多くあり、これらの習得にもビッグイベントを見据えて行動した方がより身になりやすいと考えました。
そしてグランプリ本戦では順位と言う形で「自分の現在地」を明確に知ることが出来ます。この事は今日に至るまでの自分のやり方が正しかったのかを判断する指標にもなり、シーズン毎の答え合わせとして反省に役立てることが出来ます。
以上の事から、国内で開催されるグランプリには全てに出場するつもりでいます。
 
原根健太


ただ、グランプリ京都への参加を決めた時点では、直近の目標だったグランプリ静岡に向けての練習真っ只中であり、レガシーをプレイする余裕はありませんでした。

本格的にレガシーの練習を始めることができたのは、静岡を終え、一息がついた1月の終わり頃になります。
この頃はまず存在するデッキも使われているカードも良く分かりませんでしたし、何より本格参入を果たした後はリミテッドしかプレイしていなかったので、構築戦のあらゆる勝手が分かりませんでした。

経験が無いのは仕方が無いにせよ、よりにもよって最も広いカードプールのフォーマットに挑戦する訳ですから、難しい挑戦になることは分かっていました。
しかしながら、静岡でバブルマッチを敗北した悔しさが強い原動力となり、絶対にやってやろうと言う気持ちで燃え上がっていました。

レガシーに取り組むにあたり、まず始めに手を付けたのは環境を知ることです。参考にできそうな文献は片っ端から読み漁りました。

中でもhappymtgにてHiroki Kenta氏が連載中の「USA Legacy Express」は素晴らしいものでした。
各所に散らばる最新のレガシー情報をくまなくチェックでき、有識者による考察付きと、この上ない有り難さです。
http://www.hareruyamtg.com/article/category/writer/Kenta_Hiroki

またその中で頻出するStarCityGames開催のトーナメントに関しては動画アーカイブが記録されており、映像にて各デッキの動きを確認することが出来ました。リストの上では理解できない動きや用途も多いので、動画コンテンツの有用性は計り知れません。
http://www.starcitygames.com/index.php

ざっくりとデッキについて知った後、その理解をより深めてくれたのはhappymtg掲載、斉藤伸夫さん連載の「のぶおの部屋」です。

サイドボーディングの詳細や全体を通してのゲームプランなど他では滅多にお目に掛かれないような実践的記述が多数見受けられ、重宝しました。
今はもう連載が終了してしまっているのですが、大好きな企画なのでいつか復活しないかと期待して止みません。
http://www.hareruyamtg.com/article/category/writer/Nobuo_Saito

このように、有用な文献が多数存在しているのはマジックの素晴らしい点のひとつだと思います。
僕が今までプレイしてきたゲームはそうしたものがほとんど無かった(もしくは、伝わる状態に無かった)ので、新しく始める時に苦労したおぼえがあります。
マジックに関しても、教えを受けられるような人間が近くにいなかった為、独学でやっていくしか無かったのですが、その中で上記に挙げたような文献には本当に助けられました。
その他、レガシーをプレイされている方々のDiaryNoteやブログの考察記事は見つけ次第目を通し、知識の吸収に努めました。
僕が元よりカバレージや考察記事を読むことが好きなのもありますが、電車による移動時間やちょっとした空き時間を勉強に費やせるのも嬉しいところです。 

■練習開始

そうしたお勉強が済んだ後、ひとまず実際に触れてレガシーの感触を確かめる事にしました。

個人的に良さそうだと感じたデッキをいくつかピックアップし、順次テストです。
 
Terminus / 終末 Ad Nauseam / むかつき Delver of Secrets / 秘密を掘り下げる者
ここで最初に試したのはミラクルANTURデルバーなどですね。

ちなみに、僕の普段の調整方法はMagic Onlineで、リアルとの比率は9:1とも言えるレベルでオンラインに寄っています。平日も夜の空いた時間で気軽に練習できますから、相対的に練習量が増えることを重要視しています。
自身の経験上(他のゲームにおけるものですが)トーナメントを勝ち抜くためには大多数と差別化をはかる必要があると考えていて、プレイスキルや構築的アイデアはもちろんのこと、「練習量」も差別化をはかれる要因のひとつだと思っています。

僕はとにかくたくさんの練習を積むことで「普通を極める」事に努めています。

センシティブなプレイングや斬新なアイデアは誰しもが得られる訳ではなく、それらは才能の問題であったり運によるものであったりと、自ら望んで手に入れるのは難しいものだと思うからです。
当たり前のプレイングを当たり前にこなす。「普通を極める」ことが多くのプレイヤーの尽くせる最善手だと考えます。

完璧に普通をこなす事って案外難しいもので、どこかしらでミスをして正着から逸れてしまう事が往々にあります。特に経験の無い状況では何が普通であるのかさえ判断できないことも多いです。
練習を重ね、より多くを経験出来ていれば、そこに至らなかったプレイヤーに対する優位が生まれ、結果的に差別化をはかることが出来ます。

他者には無い、自分にとっての普通を広げること。それが「練習量」が生み出す利点で、地道な努力でも積み重ねれば強い武器になると言うのが持論です。
実際今回の自分はそうする他無いと思っていて、自分に言い聞かせるように毎日コツコツと練習を重ねました。

■デッキ選択

デッキを組んでから1か月間かなりの量練習を重ねましたが、負けに負けました。

イベントの成績で言うなら良くて3-1、大体2-2、0-2する日も!と言った感じで、サッパリ勝てません。
Brainstorm / 渦まく知識 Misty Rainforest / 霧深い雨林
ドローソースやフェッチランドの運用などレガシーにおける作法が全く分かっておらず、相手デッキのなんたるか以前に、自分のデッキさえロクに使えていない状況で、慣れるまで随分時間が掛かりました。

揉まれに揉まれひと月が経過し、にわかなりにもなんとか物が考えられるようになった頃、レガシーの環境に対してひとつ感じたことがあります。

それは「受けることの難しさ」です。

多種多様なデッキの存在するレガシーの環境では相手側の攻め手もデッキ毎に様々で、何を相手にしたかでカードの強弱が上下し、選択的な裏目を見る事が多々ありました。
Tarmogoyf / タルモゴイフ Lightning Bolt / 稲妻

コンボを相手取った除去などは分かりやすく、クリーチャーデッキ相手でも 《タルモゴイフ》 を前にした 《稲妻》 や、 《真の名の宿敵》 に対する 《剣を鍬に》 など、噛み合わせの悪さを歯痒く感じる事が少なくありませんでした。

そうした経緯を踏まえ、これから自分が目指すべき方向性を整理したところ、特に相手との噛み合わせを考慮せずとも良く、自分の動きを完結させることで勝利条件に到達できる「コンボデッキ」の選択に目を向けることになります。それが最終的な選択デッキ「オムニテル」に繋がりました。
Show and Tell / 実物提示教育 Omniscience / 全知

コンボデッキはその性質上デッキを構成するカードのほとんどが円滑にデッキを動かす為のカードであり、相手次第で効力が上下するようなものは少なく、パフォーマンスが一定で安定しています。

実はオムニテルはかなり早い段階から「息抜き用のデッキ」としてフリー対戦でちょくちょく遊んおり、デッキの動きをあまり理解していなくても2、3枚のコンボパーツが揃えば簡単に勝てるという点で、悩んだ時の気分転換にはちょうどいいデッキでした。

新たな選択肢として注目し直し、腰を据えてデッキを回し始めたところ、勝率・感触共に悪くなく、他の選択肢も並行して考えていましたが、徐々にオムニテルを選択する方向で考えがまとまって行きました。

他のコンボデッキよりもオムニテルが優先されたのは安定性を重視した結果です。

ANT」や「リアニメイト」などもテストしましたが、これらのデッキはマナブーストやリアニメイトなど偏ってしまうと事故になり得るカードが多くあり、またマリガンの多さも気になりました。
Thalia, Guardian of Thraben / スレイベンの守護者、サリア Deathrite Shaman / 死儀礼のシャーマン
また 《スレイベンの守護者、サリア》 《死儀礼のシャーマン》 のようにそれなりの数メインボードから見られるカードがキラーカードになる点にも納得を示せず、リスクを避けて行った結果で最も安定性があると判断されたオムニテルを選ぶことにしました。

最終的なリストはこうなりました。

過去のイベントの入賞リストを参考に、様々な構築をテストしました。

結論として、基本的にメインボードはベーシックな構成を取っていれば間違いなく、小細工を加えずとも全体を通しての勝率は8割近くありました。
問題は他のコンボデッキよろしくサイドボード後の戦いで、対策カードが増量される2本目以降のゲームをどう捉えて行くかが1番の課題です。
 
Cunning Wish / 狡猾な願い

そこで僕が今回注目したのは 《狡猾な願い》 です。このカードはテンポの悪さと引き換えにあらゆるカードに変化する柔軟性を持ち、かつデッキの勝利手段でもある為無理なく複数枚を投入する事ができます。

このカードを相手の妨害に対する汎用的な回答とすることができれば、デッキの動きを保持した最低限の入れ替えで十分な数の対応策を用意できると考えました。コンボデッキはその勝利手段を達成する上でメインデッキの状態がベストですし、変更を加えれば加えるほど本筋からは逸れて行きますから、この点においてもウィッシュボード戦略はフィットします。

多量のカウンターで対応を図る相手には 《否定の契約》 《狼狽の嵐》 《紅蓮破》 を、ハンデスでの対応を図る相手には 《時を越えた探索》 によるリカバリーを、ヘイトベア等のパーマネントによる対策を図る相手には 《殺し》 《拭い捨て》 をそれぞれ用意しました。

基本戦略を固めた後、MOのデイリーイベントに3度出場し、3-1が1回に4-0が2回でした。

地元の非公認大会にも出場(CBL様:http://74598.diarynote.jp/201504171103474246/)した結果、5-1で63名中2位と非常に好感触でした。
 
Toxic Deluge / 毒の濁流 Pyroclasm / 紅蓮地獄

この時はタッチカラーを黒に絞っていましたが、URbデルバー相手に後手を選択するプランを取ることに決めた関係で 《毒の濁流》 ではやや遅いと感ました。 《紅蓮地獄》 の為に赤を足し、デッキ完成です。

こうしてグランプリ京都前の準備は完了しました。

あと、本番をむかえるだけです。
というわけで、本戦のレポートに続きます。

「J-SPEED」原根健太のGP京都レポート:GP本番編

※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。

『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』

http://mtg-jp.com/

『MAGIC: THE GATHERING』

http://magic.wizards.com/en
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