rizerの小部屋

石村信太朗のプロツアー『破滅の刻』レポート

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皆さん、こんにちは! rizerこと石村信太朗です。

今回の記事では、先週7月28-30日に開催されたプロツアー『破滅の刻』の参戦レポートをお送りさせていただきます。

先に結果から報告させていただくと、 今回はスタンダードラウンド7勝3敗ドラフトラウンド5勝1敗、合わせて12勝4敗でフィニッシュと、ベスト8には一歩届かなかったものの一般的な目標である11勝5敗を上回る嬉しい戦果となりました。

今回も通例通りにスタンダードデッキについてをメインに語らせていただく予定ですが、テンションが上がり過ぎた結果として製作過程の話が非常に冗長になってしまったため、興味のない方、読むのに疲れた方は適宜ジャンプボタンを活用して頂ければと思います。

では前置きはこのあたりで済ませて、まずはささっと終わるドラフト編から本編をお送りしていこうかと思います!

【ドラフト編~環境認識~】

『破滅の刻』環境は三国志環境 今回もTeam Cygamesさんのドラフト合宿(いつもありがとうございます!)にお邪魔させていただき、前回 の反省を活かしてMOでの練習もPT直前週までみっちり実行。

把握した環境は青赤、白黒、青緑の三色が頭一つ抜けている歪な世界でした。

特に顕著なのは青赤で、特筆するべきは膨大な量の専用カードです。 非クリーチャー呪文が豊富な青赤での使用が推奨されるカードがコモンとアンコモンにたっぷり存在しており、青か赤のカードを集めていると自然と青赤に進みたくなる状態なので、卓に青赤が三人誕生することもざらにあります。

そして、膨大な量のカードが準備されているだけあって、三人分のカードくらいなら何とかなってしまうのが今環境の青赤のすごいところです。
逆に卓の青赤が独占状態になった日には呪文シナジーだらけの最強デッキが簡単に完成するため、期待値の高いアーキタイプとなっています。

残った二つのアーキタイプについては、白黒も青赤同様にゾンビシナジーと白黒除去ミッドレンジ向きのカードが豊富なバキュームタイプ。 青緑(青緑多色)は青赤と白黒にはじき出された緑を最もうまく使える枠兼『破滅の刻』のコモン二大除去の 《抑え難い渇き》 《待ち伏せ》 を両方使える点が魅力的なアーキタイプです。 その他の色に関しては、安心と信頼の除去祭りと飛行祭りができる赤黒と青白はまずまず強力、赤白緑の組み合わせ三種は実直なビートダウンすぎるのが難点ですが卓に黒い怪物デッキが誕生しなければチャンスあり、『アモンケット』のシナジーを水で薄められてしまった黒緑と青黒は三パック目次第になるので厳しい印象

そしてそんな三強環境で差がつく場所はデッキの線の太さ(≒クリーチャーのサイズの大きさ)です。
『アモンケット』のアグロ用カードが減少
ここしばらくは二マナの攻撃的なクリーチャーが強く、 変身・機体・カルトーシュなど二マナクリーチャーからの速攻を肯定するシステムも強力だったため、二マナをたっぷり集めた高速ビートが環境の最適解となる状態が続いていました。

しかし『破滅の刻 』 には、二マナの攻撃的なクリーチャーと相性のいいシステムが存在せず、逆に二マナ1/3や三マナ3/3、回復持ちの 《尽きぬ希望のエイヴン》 や永遠持ちなど相性の悪いクリーチャーのオンパレード。 頼りの 《オケチラの報復者》 《ロナスの重鎮》 も小型対決では猛威を振るうものの、サイズの大きい生物相手は無力です。

カード間のシナジーもゾンビを除くとそこまで強くないため、壁と除去でビートダウンを阻止することが容易であり、受けるデッキに大きなチャンスが与えられています。

二マナ圏を数枚に抑えて三~五マナの攻防で活躍できる骨太な生物と大量の除去で構成されたシールドのようなデッキが強い昔のリミテッドのような環境。

上で赤白緑にマイナスの査定を出しているのもこれが原因で、対する上位三色は青赤は呪文中心戦略、白黒は除去ミッドレンジ戦略、青緑は多色ランプ戦略でそれぞれビートダウン以外に軸をもっているため、総合力面でも強力です。

また、シールドのような環境であるということは、ギリギリのせめぎ合いよりもデッキの総合力で決まることが多い環境であるため、ピック後の構築が非常に重要となっています。

活躍の場面が限られるカードや、デッキに合っていないカードをメインボードに投入してしまうと大きなハンデとなるため、いつも以上にデッキのバランスに気をつける必要があります。

シナジー不足のシナジー前提カードや、攻めるデッキの壁、守るデッキのブロックに不向きなクリーチャー、多すぎるコンバットトリックなどに注意しましょう。
デッキに合っているかどうかをしっかりチェック!
以上を受けて、今回の大まかなピック方針は以下の形となりました。

1.青赤と白黒には積極的に切り込む。
2.二マナ圏よりも除去優先。
3.空いてる色に参入して三パック目の流れを祈ってミッドレンジピック。

【ドラフト編~結果発表(5-1)~】

それではさくっと結果発表です。

一回目のドラフトは黒緑で2-1。 一パック目の初手から 《砂爆破》 《無法の斬骨鬼》 の二択で頭がクラクラしたものの、空いている黒緑を拾い集めることに成功。

二パック目初手 《不屈の砂漠》 、三パック目初手 《活力のカルトーシュ》 とパック運には恵まれなかったものの、デッキに必要だった 《活力の試練》 《残忍な野猫》 が共に目論見通りに一周した幸運のおかげで、呪文が強力で生物が太い優秀なデッキに仕上がりました。

ゲームの方は、初戦の青赤相手こそ土地事故で落としてしまうものの、二戦目の青赤には除去と生物のサイズ差でダメージレースをひっくり返して勝利、三戦目の緑白相手は長期戦にもつれ込ませて呪文の性能差で勝利と理想的な展開。

MVPは残忍な野猫。2/1と2/2を一枚で抑えつつ4/4をチャンプして手札を補充するなど、こちらの土俵に引きずり込むまでの時間稼ぎに大きく貢献してくれました。

二回目のドラフトは青赤で3-0。

今度は初手で 《混沌の大口》 を引けて一安心。二手目 で 《穿刺の一撃》 で色を重ねつつ、 《謎変化》 が流れてきたので青赤チャンス到来です。

卓の青赤が空いていて、 《抑え難い渇き》 を優先して放流した 《血水の化身》 が一周したり、 《差し迫る破滅》 が六手目で拾えたりとお祭り状態。

三パック目初手で 《威厳あるカラカル》 をカットする余裕がある順風満帆で、強力なデッキを組み上げることができました。

呪文が多く二マナ生物が薄いデッキではあったので 《呪文織りの永遠衆》 を入れるかどうかを悩み、ダメージレースを挑むデッキでも戦闘時にサイズを上げられるデッキでもないため投入を見送りましたが、実戦でも欲しい場面はあまりなかったため失敗ではなかったようです。

ゲームの方は、初戦の緑白を飛行で圧倒して勝利、二戦目の 《王神、ニコル・ボーラス》 入りの緑多色相手にゲームプランミスをやらかすもデッキパワーでごり押し勝利、最終戦の 《ドレイクの安息地》 《王神の贈り物》 入りの青黒相手も加虐ビートダウンで押し込んで勝利と文句なし。

総括として今回のドラフトラウンドについては、練習を活かして満足のいくドラフトができたので次回もこの調子で頑張りましょうといったところで、スタンダードの話に移っていきたいと思います。

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【デッキ選択前編~ENJOY MTG~】

傍流デッキでファイナルチャレンジ OR 主流デッキを磨き上げて持ち込む

前回のレポートの最後を飾ったこの二択。

プロポイント13点でシルバーレベルには遠く届かず、仮にシルバーレベルに到達したところで航空券無しで海外PTに参加する気のない自分にとっては、今回の京都が名実ともにプロツアーのラストチャンスです。

そんな最後の戦いに臨むに当たって選んだ答えは……『傍流デッキでファイナルチャレンジ 』もとい趣味100%のMTGを楽しむことでした。

MTGが大好きなプレイヤーが大集合して腕を競い合う夢のようなイベントのプロツアーですが、参加にあたって欠点もあり、それは時間を消費しすぎることです。

本気でPTに挑むとなると、スポイラー発表直後からデッキを考えつつ、発売後はドラフトの練習をして、MOに導入されたら日々構築デッキを調整、渡航の時間も馬鹿になりませんし、前後のGPに参加しようものならおよそ一か月近くの時間を消費してしまいます。

PTに通年で挑むとなると、年四回も時間の断層が発生してしまうため、まとまった時間を取りづらく他の勉強を妨害する能力が非常に高い。

しかも、練習で得たもののほぼ全てがプロツアーで消費されてしまう超浪費家仕様なので負けてしまうと思い出しか残りません。このハードモードにも関わらずPTに継続参戦している人たちのMTG愛は本当に尊敬できます。

自分の場合は、MTGのことは大好きですが、趣味として好きなだけで人生をオールインできるほどの愛ではないため、PTの参戦権利を失って一旦距離をおけるならそれもそれでまた良しといったところ。

そんなわけで、プロツアー京都には勝利ではなく、趣味として全力で楽しむことを求めての参戦に決定。

勝利を優先しないためいつもとは構築方法が変わり、環境を分析して解答となるデッキを探るのでははなく、好きなカードからデッキを組む方法で構築ないし調整を始めます。 《差し迫る破滅》 入りのバーンや 《ラザケシュの儀式》 を手に入れたサイクリングコンボ、 《武器庫の開放》 《正気減らし》 をサーチするライブラリーアウトなど楽しそうなデッキに一通り触れつつ、練習時間の大半は四天王と定めたデッキのテストに充てました。

四天王とはすなわち四つのデッキ、僕の心を捉えて離さなかった珠玉(?)のデッキを武田四天王の風林火山になぞらえて紹介していきたいと思います。

ではまず第一号。

合言葉はビートダウン速きこと風の如く
大好きな狼ロボこと 《狼の試作機》 と『破滅の刻』の一押しカード 《立身 // 出世》 を使う赤黒のディスカードデッキです。

二ターン目に 《血怒りの喧嘩屋》 をプレイして 《血怒りの喧嘩屋》 の二枚目をディスカードして、三ターン目に 《立身 // 出世》 の表裏で釣り上げて大ダメージを与え、手札が減っているので 《熱烈の神ハゾレト》 も即攻撃可能と超高打点を誇ります。

赤単相手にもダメージレース負けしなかったため戦績は四天王最強であったものの、最後のPTを 《熱烈の神ハゾレト》 で殴って終わるのは嫌だという趣味嗜好の犠牲となり使用候補から脱落しました。

続いて第二号。

合言葉は一コス並べる様しずかなること林の如く
攻撃以外の使い道がある一マナクリーチャー大好きなんですよね。

グッとガッツポーズすると相手が死ぬ 《穢れた血、ラザケシュ》 を使えるのも◎、かませキャラも大好物です。

ビートダウンに鬼強い 《闇の救済》 を使っているだけあって赤単アグロ相手の感触も悪くなかったものの、突如現れた青白 《王神の贈り物》 《激変の機械巨人》 をプレイされた時に心がぽっきり折れてそれ以後はノータッチ。

続いて第三弾。ここまでの二つとは違って、本命デッキの一つでした。

合言葉は次元侵掠すること火の如く。
Nicol Bolas, God-Pharaoh / 王神、ニコル・ボーラス
《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》 様には旧エクステンデッドでお世話になりました。
《残忍な剥ぎ取り》 《機知の勇者》 でデッキを高速回転させて、昂揚とプレインズウォーカーで相手を蹂躙するミッドレンジデッキ。

ボーラス様の新しい手下一号ことテゼレットは大量生産した電池の使い道がないのが弱点でしたが、高速プランの 《王神、ニコル・ボーラス》 と底なしのマナを要求する 《機知の勇者》 《スカラベの神》 が登場したことで大幅なパワーアップを果たしました。 《崩れた墓石》 もスタン落ちする前に使いたかったカードの一枚なので、プロツアーで使いたいカードがぎっちり詰まった大好物デッキです。

残るは動かざること山の如くのデッキの話なんですが、ここで唐突に昔話に突入します。

時は10年以上さかのぼり、舞台はONS-MRDブロックのスタンダード環境。

日本の関東でひっそり誕生した『赤緑どすこい』と呼ばれるデッキがありました。 デッキの主軸である 《弧炎撒き》 が『どすこい』のあだ名を持つ 《大地の精霊》 と同コスト同サイズであったことから命名されたこのデッキは、稀代のデッキビルダー水谷直生さんにより製作され、 《煮えたぎる歌》 から 《弧炎撒き》 《包囲攻撃の司令官》 を三ターン目に召喚して相手が防御態勢を整える前に攻め切る単純明快な戦略で多くのプレイヤーの心を魅了しました。

僕もそのうちの一人だったんですが、生憎と当時は黒単しか使っていない状態でカード資産に問題があったため、赤のコンセプトそのままにパートナーカラーを黒に変更して『赤黒どすこい』を勝手に作成。

二世ものとはいえオリジナルデッキとして組み上げた『赤黒どすこい』でPWCで好成績を収めたり、シェアした友人が日本選手権予選を突破したりしたことが非常に嬉しかったことが心に刻まれています。

閑話休題を終了して話を続けると、僕にはスタンダード落ちする前にどうしても使いたかったとある一枚のカードがありました。
それは 《突沸の器》 です。 二マナを消費してニマナを生み出すマナ貯蔵庫でしかないため、モダン禁止カードの 《煮えたぎる歌》 とは比べものにならない一枚ですが、三ターン目に五マナを生み出すカードであるのは間違いなく、どすこい戦略への執着心を煽るのには十分でした。

デッキは赤単+無色もしくは二色で構築する形となり、『カラデシュ』の 《反逆の先導者、チャンドラ》 、『アモンケット』の 《栄光をもたらすもの》 と徐々に相性のいいカードが増えてきていたものの、強いデッキとして組み上げるにはあと一歩が足らず最終セット『破滅の刻』に全てを賭ける形となっていました。

そして幸運にも 《突沸の器》 は『破滅の刻』にて最高のパートナーと出会いました。

生まれたデッキがこちらです!
動かざること山の如し
赤の五マナ!  《弧炎撒き》 を超えるサイズ! 優秀なマナ生成!

《弧炎撒き》 《煮えたぎる歌》 が合体した究極のどすこい生物がここに爆誕です。

ただでさえ強力な一枚ですが、都合のいいことに環境の除去が赤の火力呪文と 《致命的な一押し》 《闇の掌握》 に偏っているため、序盤に戦場に着地すれば敵はなし。

《突沸の器》 《永遠衆、ネヘブ》 のコンボこそが環境最強というわけです。

そして 《突沸の器》 を活用するための五マナ圏たっぷり構成を正当化する 《ハゾレトの終わりなき怒り》 も加入する大幅強化。 六マナと少し重いコストも土地がアンタップしないデメリットも 《永遠衆、ネヘブ》 のマナ生成能力があればへっちゃらです。

正に真打ちは最後にやってきました。 『カード名・イラスト・種族・フレーバーどこをみてもすばらしい1枚。 』(引用:八十岡翔太の『破滅の刻』神話レア評 )と八十岡翔太にも絶賛された格好良さにもうメロメロです。

口ではデッキを未だ悩んでると言いながら、内心では 《永遠衆、ネヘブ》 と栄光を掴みに行く以外の選択肢は消滅していました。

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【デッキ選択~悪戦苦闘~】

しかし、本番に向けてMOの構築リーグをこなす過程で問題が発生します。
Neheb, the Eternal / 永遠衆、ネヘブ
ネヘブ、勝てない。
全五戦のリーグで二勝三敗と三勝二敗をいったりきたりしている状態。

原因は明確で、先手後手が勝敗に直結しすぎている構成にありました。

先手なら天下無双の3t目 《永遠衆、ネヘブ》 も、後手の際にはストーリー的には遥かに格下の 《アン一門の壊し屋》 に門前払いされるだけの存在です。 デッキを構成する他のカードも 《反逆の先導者、チャンドラ》 《現実を砕くもの》 《栄光をもたらすもの》 といった先手で強いが後手で弱いカードのオンパレードだったため、後手の弱さが明確であり勝ちきることができません。

《焼けつく双陽》 をメインに投入するなどで対応を試みはしたものの、 《突沸の器》 - 《永遠衆、ネヘブ》 - 《ハゾレトの終わりなき怒り》 のメインラインがそのまま弱点となっているため、細かな変更は焼け石に水でしかありませんでした。

『残念ながら力及ばず負けてしまいましたが、大好きなカードで最高のプレイ―やーと戦うMTGは最高に楽しい時間でした』

PT京都前週のGP京都行の新幹線の中でいくつか今回のレポートのプロットを考えましたが締めの言葉は常に惨敗を予測したもの。
現実を見ないふりをしていたもののPTで勝てるデッキではないのは自明の理。

どうやって勝つかを考えるのではなく、どのようにネヘブをプロデュースするかに思考を切り替える自分がいました。

しかし、京都から日帰りした翌日の日曜日に、リーグ戦での戦績がついに一勝四敗をマークしてしまいます。

MOリーグで一勝しかできないということは、ハイレベルなプロツアーでは全敗必至です。

いくら遊び気分とはいえ、一勝もしないMTGで満足できるかと問われると答えは否

非情の決断で決戦に臨み、

リーグ0-2で取り付く島もなく退場。

ここまでの妄執とは裏腹に最後はあっさり。 《永遠衆、ネヘブ》 に別れを告げることとなりました。

その後しばらくは上記の 《王神、ニコル・ボーラス》 のデッキを弄りつつ、赤単アグロなどのtier1デッキに触れていたのですが、 《永遠衆、ネヘブ》 デッキ断念と時を同じくして、MOリーグに産声を上げていたデッキがありました。
プロツアーに先駆けて、いち早く完成してしまった 《王神の贈り物》 デッキです。

プロツアー前にうっかり流出してしまったと噂されているだけあり、デッキパワーと安定性も高く、環境初期とは思えない完成度の高さを誇るデッキです。

壁クリーチャーが豊富で 《発明の天使》 でライフを取り戻せるためアグロに強く、ミッドレンジには 《王神の贈り物》 《機知の勇者》 のカードパワーでごり押し、コントロールデッキも 《復元》 《来世への門》 を絡めた怒涛の 《王神の贈り物》 連打で沈めることができます。
Gate to the Afterlife / 来世への門 Refurbish / 復元 God-Pharaoh's Gift / 王神の贈り物
無限の贈り物!
赤単アグロに有利なデッキといえばミッドレンジなわけですが、 《王神の贈り物》 デッキは特にそのミッドレンジに強いデッキで、 ゾンビ緑黒ビートダウンティムールエネルギーといったミッドレンジを全て粉砕してしまいます。

赤単アグロ相手も赤単側が無対策ならば明確に有利がつくため、もし一週間前に情報が漏れていなければプロツアーで暴れ回ったことは間違いなく、悲運のデッキですね。

そしてこの 《王神の贈り物》 デッキの攻略に苦戦します。

前述のように、赤単に勝つためのミッドレンジでは相性が非常に悪く、赤単に勝てないようなコントロールデッキで勝っても仕方がありません。

ボーラス様デッキは余った無駄カードを 《機知の勇者》 で処理できるため、 《没収》 を多めにサイドに搭載することで 《王神の贈り物》 デッキには有利に戦えるのですが、赤単アグロに明確に不利なのが玉に瑕。

ボーラス様デッキはほとんど完成している状態のため、他の選択肢を求めて赤単アグロ 《王神の贈り物》 デッキに勝てるデッキは何かをリストを総点検して思考します。

1.三マナ以上のカードは 《王神の贈り物》 対策として構えるのに向かないため、 《削剥》 《造反者の解放》 を使いたい。
2. 《スカラベの神》 《没収の曲杖》 《屍肉あさりの地》 といった墓地対策をメインから採用できるとなお良し。
3.赤単アグロに勝つには 《チャンドラの敗北》 や各種攻撃的カードで真正面から立ち向かえる赤か、ライフゲインと追放除去が豊富な白が望ましい。

以上を情報を踏まえて構築した僕の環境への解答が以下のデッキでした。


Neheb, the Eternal / 永遠衆、ネヘブ
ただいま!
俺はお前が大好きだぁー!ということで、使用しない宣言をあっさり撤回。

申し訳程度に 《突沸の器》 《永遠衆、ネヘブ》 の枚数を減らして復活です。

しかし、今度はしっかり勝利を見据えて構築したためデッキ自体の構成は見れるものになっており、MOリーグに参加すると三勝二敗とまあまあな戦績で、形を直して再戦に挑むととんとん拍子に三連勝。

四戦目の赤単アグロ相手こそ押し込まれて負けてしまったものの、最終戦のエルドラージランプを3t目 《永遠衆、ネヘブ》 二回で粉砕して念願の四勝一敗を達成です。

しかも三本目の内容が 《破滅の刻》 《コジレックの帰還》 《反逆の先導者、チャンドラ》 を乗り越えた末に、加虐によって 《世界を壊すもの》 のブロックを無効化しての勝利と 《永遠衆、ネヘブ》 の強さを証明するものだったため脳内麻薬がドバドバ。

しかし、このエルドラージランプ相手に大興奮してとった行動によって運命が流転しました。

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【デッキ選択後編~再会~】

きっかけは少し時を遡って月曜日のお昼頃、GP京都の入賞でPT京都の参加権利を獲得した晴れる屋プロズの井川良彦さんからLINEでプロツアーのデッキについての簡単な相談を受けたことでした。

その時には、赤単アグロ 《王神の贈り物》 デッキのデッキパワーが頭一つ抜けていることを伝え、井川さんと僕の共通の好みであるランプデッキについてはMOで赤単アグロに追いやられていることから試していないがオススメできないと話すだけで会話は終了しました。

そして時は進めてリーグを四勝一敗した時点に戻ると、大興奮の末に僕がとった行動は、井川さん相手に最終戦で戦ったエルドラージランプの強さを伝えることでした。

脈絡のない行動で今思えば、相手を讃えることで勝利した 《永遠衆、ネヘブ》 を内心で持ち上げる悲しい心理テクニックだったのかもしれませんが、それはさておき井川さんの返答はランプを生放送で試してみるとのものでした。

人に薦めておいて自分は触らないのもどうかと思ったため、何かしらのフィードバックをしようと自分も放送の裏でランプを回すことにしました。

すると、初回しでミスプレイ多数にも関わらず、赤単アグロ 《王神の贈り物》 デッキをあっさり粉砕して四勝一敗。

横目に見ていた『井川良彦のイカMO団!MO生活』 でも井川さんが 《破滅の刻》 で自分の 《炎呼び、チャンドラ》 を流すプレイをしながら四勝一敗しています。

……あれ? MTGってこんな簡単に勝てるゲームだったけ?

《永遠衆、ネヘブ》 デッキの調整で麻痺していた精神に反応あり。

エルドラージランプは粗削りなものの鍛えれば8勝や9勝を狙えそうなデッキですが、 《永遠衆、ネヘブ》 デッキは改善こそされたもののいまだに後手番の問題は解決していないため7勝が限界でしょう。

赤単アグロ緑黒ビートダウンで4-1しても毛ほども動かなかった心でしたが、エルドラージランプもまた自分にとって特別なデッキであるため心が動きます。

思い返せばこの連載プロツアー『イニストラードを覆う影』 に井川さんと旧エルドラージランプで参加したところから始まっています。

エルドラージランプに取り組む場合には井川さんと二人で調整する形になる可能性は高そうですが、 《永遠衆、ネヘブ》 デッキを触り続ける場合には最低限の情報交換をする程度で一人で調整することになるでしょう。

前回 は袂を分かつ形となってしまったものの、お世話になった 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 とよりを戻して挑戦する最後のチャンスでもあります。

《永遠衆、ネヘブ》 デッキかエルドラージランプ、僕の選んだ答えは井川さんと調整して 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 と戦うエルドラージランプでした。

ここまでは九割情の一割理論でしたが、他の人と調整するとなると話は別。

情報の交換・検討・討論をしながらリーグを繰り返して、勝てるデッキを作ることを意識してデッキを磨き上げるだけです。

それでは、記事のメインとなる完成デッキの解説に移らせていただきます。

【デッキ解説~赤緑ランプ~】



いつも通りに簡単な解説から入らせていただくと、このデッキは特定のデッキをターゲットせずに、環境の全てのデッキに有利に戦うことを意識して構築されたコントロール要素を持ったランプデッキです。
エルドラージランプ の同型対決と 《静電気式打撃体》 を採用したエネルギーデッキを苦手としていますが、その他のほとんどのデッキ相手に有利に戦うことができます。

《約束の刻》 《破滅の刻》 の二種の『刻呪文』による主導権奪取を軸としており、三マナのマナ加速と二マナの除去呪文がサポートする構成となっています。 また、サイドボードに鎮座する 《不屈の追跡者》 もデッキを代表するカードの一枚です。

環境最強のカードとして名が上がることも多いカードですが、①パワーカードが豊富なためドローの価値が高く②マナ関連カードが多いためマナフラッドしやすいかわりに土地が詰まりづらく③サイド後に相手がクリーチャー対策を減らす傾向にある、理想的な条件が揃ったエルドラージランプ で使用することでその真価を引き出すことに成功しています。

カードの採用理由について

二~四ターン目の滑らかなアクション、大型エルドラージの召喚のためのマナが足らない状況、サイド後の 《不屈の追跡者》 などの関係でデッキの土地をアンタップインで統一したかったため、 《獲物道》 の採用を見送っています。

《獲物道》 を不採用にした分の色マナ補助は 《霊気拠点》 がカバーしており、通常状態では無色マナしか生み出せない弱点を二種類のマナサポートエンチャントが補い、生み出されるエネルギーが 《蓄霊稲妻》 をサポートします。

また、今回は見送りましたが 《霊気拠点》 の採用には、サイドボードに 《砂漠の拘留》 《神の導き》 といった赤単アグロ対策や、 《王神、ニコル・ボーラス》 など三色目以降のカードを採用しやすくなるメリットもあります。 最大の仮想敵が赤単アグロだったため、三マナの 《コジレックの帰還》 と併せて十枚の序盤の除去を採用しました。

内訳としては、 《王神の贈り物》 を対策しつつ機体ビートダウンや各種機械巨人を睨める 《削剥》 をメインに、 《削剥》 を想定して持ち込まれたタフネス4のクリーチャーを排除可能 《蓄霊稲妻》 を枚数を分ける形で採用して、手札に除去呪文が溢れるリスクを抑えつつ昂揚補助となる 《歩行バリスタ》 を手札に重なりにくいように二枚だけ採用した形です。

メインボードの 《コジレックの帰還》 を増量したり、 《蓄霊稲妻》 をサイドボードに落としていた時期もありましたが、緑黒ビートダウンへの耐性や赤単アグロ相手の二ターン目の行動の重要性、 《コジレックの帰還》 がマナ加速と競合する点などを考慮すると二マナの除去呪文を増やした方がいいとの結論に落ち着きました。 赤単アグロをはじめとしたアグロデッキに強い 《楽園の贈り物》 を四枚フル採用して、中速~低速対決で輝く 《奇妙な森》 をサブで三枚採用しています。

二種類のエンチャントは実質二マナで設置できることも大きなメリットで、特に先手四ターン目の二回行動やサイド後の 《不屈の追跡者》 絡みで役に立ちます。

《砂の下から》 はサイクリングの選択肢と 《見捨てられた神々の神殿》 の早期条件達成が魅力的ですが、前者はマナがいくらあっても足りない構成の都合と 《楽園の贈り物》 ライフゲインがカード一枚分の価値を持つ環境の都合で重要度が低く、後者についても赤単アグロが隆盛している関係で最速で大型エルドラージを狙うことよりもマナ加速の合間に効率よく除去を挟むことの方が優先されるため決め手にならず、今回は採用を見送りました。

エルドラージランプ同士のマッチアップでは 《砂の下から》 の価値が跳ね上がるため、同型対決が増えるようであれば採用を検討したいところです。
  《炎呼び、チャンドラ》 の全体除去は 《破滅の刻》 よりも一ターン遅く、破壊不能やタフネス5に届かない関係で緑黒ビートダウン赤単アグロ相手への有効性に疑問符がついたため採用を見送りました。ミッドレンジやコントロール相手にも 《反逆の先導者、チャンドラ》 の方がコストが軽い分、柔軟に動けて便利です。

《反逆の先導者、チャンドラ》 は、コントロールデッキを対策しつつ、ティムールエネルギー緑黒ビートダウン、同型対決でマナランプを介さないでプレッシャーをかけることができる貴重な一枚で、 《難題の予見者》 などのタフネス4への解答としても重要な役割を担っています。 《難題の予見者》 は主に同型対決を見据えたカードですが、相手にプレッシャーをかける 《不屈の追跡者》 のサポート役として申し分ないため、盤面戦を得意としないデッキ相手に広くサイドインします。

《ウルヴェンワルドのハイドラ》 は軸をずらすためのカードで、 《歪める嘆き》 《否認》 をすり抜けてマナを加速しつつ、 《難題の予見者》 《不屈の追跡者》 の対処に疲労した対戦相手にさらなるプレッシャーをかけることができます。また、相手がサイドインしてくると思われる 《栄光をもたらすもの》 《アクームの火の鳥》 への対策も兼ねています。

《タイタンの存在》 は主に奔流の機械巨人コントロールを見据えたサイドボードで、 《氷の中の存在》 を除去できるカードを増やしつつ、 《周到の神ケフネト》 《スカラベの神》 を除去するチャンスを手に入れることができます。

エルドラージランプ が少なく奔流の機械巨人コントロールが多い環境であれば、 《虚空の選別者》 を外して 《タイタンの存在》 を採用するのがオススメです。

主要デッキとのマッチアップについて

【VS赤単ビートダウン】

Bomat Courier / ボーマットの急使 Earthshaker Khenra / 地揺すりのケンラ Hazoret the Fervent / 熱烈の神ハゾレト

先手有利、後手微不利のやや有利なマッチアップです。

豊富な除去呪文のおかげで小型クリーチャーの攻撃が決定打となることは少なく、主な敗因は 《熱烈の神ハゾレト》 《反逆の先導者、チャンドラ》 となります。

《焼き尽くす熱情》 も着地してしまうと致命打になりやすいため、出来る限りマナを余らせた状態で対戦相手のターンを迎えましょう。

相手の攻勢を除去呪文で対処して、後続の 《熱烈の神ハゾレト》 《約束の刻》 のゾンビトークンで時間を稼いで 《世界を壊すもの》 でガッチリブロック、膠着状態になった後に 《楽園の贈り物》 と除去呪文で場を繋いで 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 に繋ぐのが勝ちパターンです。

サイドボードについては、有効なタイミングが限られる 《反逆の先導者、チャンドラ》 をサイドアウトして、投入する除去呪文とプレイするタイミングが被るマナ加速を削ります。

《世界を壊すもの》 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 については、中盤に大型エルドラージを着地させる必要があるマッチアップであるため、減らさないのが無難です。

■サイドチェンジ例

(先手時)
- 《反逆の先導者、チャンドラ》 1
- 《海門の残骸》 1
- 《奇妙な森》 1
- 《ウルヴェンワルド横断》 1

+ 《破滅の刻》 1
+ 《チャンドラの敗北》 2
+ 《コジレックの帰還》 1

(後手時)
- 《反逆の先導者、チャンドラ》 2
- 《海門の残骸》 1
- 《奇妙な森》 2

+ 《破滅の刻》 1
+ 《チャンドラの敗北》 2
+ 《コジレックの帰還》 1
+ 《タイタンの存在》 1

【VS黒単ゾンビ】

相手クリーチャーの打点が低く、除去による遅滞戦術も有効なため、有利なマッチアップです。

主な負け筋は 《戦墓の巨人》 であるため、除去を一枚温存したり、戦闘フェイズではなくターン終了時に 《コジレックの帰還》 をプレイするなど意識的なプレイを行うのが無難です。

サイドボードについては、二本目は様子見として構成をほとんど変えず、手札破壊が多い・除去呪文を多く残している・小型生物が多く残っているetcといった相手のサイドボードの傾向を把握したのちに思い切ったサイドボードチェンジを行いましょう。

■サイドチェンジ例

(二本目)
- 《コジレックの帰還》 1~2
- 《奇妙な森》 1
- 《世界を壊すもの》 1

+ 《不屈の追跡者》 2~3
+ 《反逆の先導者、チャンドラ》 1

【VS奔流の機械巨人コントロール】

Supreme Will / 至高の意志 Glimmer of Genius / 天才の片鱗 Torrential Gearhulk / 奔流の機械巨人
《世界を壊すもの》 《削剥》 《奔流の機械巨人》 に対応できるため、有利なマッチアップです。

メインボード戦は相手が 《世界を壊すもの》 を全て対処できるかどうか、サイド後は相手の 《氷の中の存在》 に殴りきられる前にこちらがゲームの主導権を握れるかどうかが戦いの焦点となります。

《世界を壊すもの》 《海門の残骸》 《不屈の追跡者》 などの関係で土地がいくらでも欲しいマッチアップになるので、二本目以降はマナフラッド気味の手札でも積極的にキープしましょう。

サイドボードについては、対ゾンビ戦同様に相手がどんなサイドボードチェンジを行ってくるかで取るべき対応が異なります。 《氷の中の存在》 が採用されていない場合には 《削剥》 を多めに残したり 《虚空の選別者》 をサイドインするのが有効であり、 《氷の中の存在》 《栄光をもたらすもの》 でビートダウンしてくる相手には 《蓄霊稲妻》 を多めに残したり 《チャンドラの敗北》 をサイドインするなどの対応が必要になります。

■サイドチェンジ例

- 《削剥》 2
- 《蓄霊稲妻》 2
- 《コジレックの帰還》 2
- 《破滅の刻》 2
- 《歩行バリスタ》 2

+ 《不屈の追跡者》 4
+ 《難題の予見者》 3
+ 《反逆の先導者、チャンドラ》 1
+ 《タイタンの存在》 1
+ 《ウルヴェンワルドのハイドラ》 1

スタンダード編~結果発表(7-3)~

×赤緑エネルギー
青白モニュメント
緑黒ビートダウン
×ティムールエネルギー
ティムールエネルギー

赤単アグロ
奔流の機械巨人コントロール
緑黒ビートダウン
奔流の機械巨人コントロール
×赤単アグロ

勝ち戦について語っても仕方ないので、敗戦三つについてさらっと綴ってみます。

一回戦の赤緑エネルギーとの対戦では、一本目を 《静電気式打撃体》 を触れずに一瞬で落とし、二本目に相手の後手3ターン目の 《導路の召使い》 《反逆の先導者、チャンドラ》 で捌いてしまったせいで、 《逆毛ハイドラ》 を倒すための 《破滅の刻》 《反逆の先導者、チャンドラ》 を巻き込んでしまうミスプレイが響いて惨敗。 四回戦のReid Dukeの黒入りティムールエネルギーとの対戦では、二本目に 《放浪する森林》 を6/6でプレイされて除去できずに敗北、三本目に相手の 《反逆の先導者、チャンドラ》 を処理できずに奥義でこんがり四回焼かれて敗北。 二本目の 《放浪する森林》 の印象が強く、 《チャンドラの敗北》 《破滅の刻》 を全てサイドアウトしていたのはやりすぎだったかもしれません。

最終戦のSeth Manfieldの赤単アグロとの対戦では、後手の二本目をマリガン後の妥協キープで落とし、三本目は相手のドローが完璧で敗北。完璧に回った赤単に負けてしまうのはデッキの特性上仕方ないですね、久々のTOP8がかかったゲームだっただけに残念。
赤単アグロ強し!

【終わりに】

そんなこんなで、当初のふわふわした状態から二転三転した結果、井川さんとウラモグに導かれて次回プロツアーの参加権利を手に入れることができました。

航空券付きの権利を手に入れた以上は参加しない選択肢なし、参加するからにはベストを尽くすべしの心で、MTGと距離を置くのは先送りにして、プロツアー「イクサラン」にはパワー全開で挑ませていただく予定です。

それでは、今回も長くなってしまいましたがこのあたりで話を畳ませていただこうかと思います。

ここまで読んでくださってありがとうございました! また、何かの記事でお会いしましょう!
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