デュエル・マスターズ全国大会2017 エリア代表決定戦  東海大会

Round3:PULU vs 常連客T

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10年前。まだ高校生だったPULUがカードショップ「おやつのじかん」へ行った時、2人は出会った。
常連客Tは優秀なビルダーだった。PULUは彼に対するリスペクトを欠かさなかったし、PULUが使うデッキはいつだって彼が作っていた。

常連客Tの名が知られるようになったきっかけは、2008年。PULUがあべけんを破り、日本一の栄光に輝いたあの年に遡る。
温厚な人柄も手伝ってPULUの名は全国に轟いた。そして3度の日本一に輝いた関東の絶対王者、hiroに比肩する知名度を得ることになる。

PULUは有名になった後も、大会へ出るたびにブログで常連客Tへの感謝と憧憬を書き綴っていた。"常連客T"という名が有名になるまでさほど時間はかからなかった。

2人は連れ立ってやってきた。既に互いが対戦相手であることを知っている。
何気ない普段通りの会話を続けながら席に座り、デッキを取り出した。

PULUが手に持つ光水自然グラスパーを組み上げたのは、やはり常連客T。その常連客Tが机上に広げたのは、水火自然グラスパー。
2人は互いに手の内を知っている。知り尽くしている。

直前の1週間、ずっと調整を続けてきた。
今も変わらず東刈谷にあるおやつのじかん。2008年とと同じ店に通い、2008年と同じ飽くなき探究を続けてきた。
手にするデッキが本当に強いのならば、いずれどこかで当たっていたことだろう。それがたまたま、予選3回戦だったということ。
とは割り切れず、PULUはぼやく。

「当たりたくなかった」

頷く常連客T。思いは変わらない。

けれど。

いつだって最後は1人。最後に立っているのは1人。それが競技デュエルマスターズだ。

英雄は、ただ一人でいい。

会場にゲーム開始の宣言が響き渡った。それと同時、2人は手札を確認。
常と変わらぬ微笑をたたえる彼らは、デュエルマスターズを始めた。

先攻の常連客Tが真っ先に唱えたのは 《フェアリー・ライフ》 である。特にこだわりがなく、バージョンを揃えていない。

対するPULUも 《フェアリー・ライフ》 を唱え、後を追う。プロモ好きで知られるPULUの手から放たれたのは、常連客Tとは対照的なホイルの 《フェアリー・ライフ》 。最も古いバージョンだ。が、PULUの 《フェアリー・ライフ》 でマナに置かれたのは 《コレンココ・タンク》 だった。

「最悪だよ」

苦笑まじりにPULUが漏らす。後攻になった彼の手札は芳しくないのだろう。 《コレンココ・タンク》 が欲しかったのだ。

2人はさらにマナを伸ばす。常連客Tは 《ボンバー・チャージャー》 を唱え、PULUは2枚目の 《フェアリー・ライフ》 《タルタホル》 で追う。が、 《フェアリー・ライフ》 でPULUのマナに置かれたのはまたも 《コレンココ・タンク》

PULUは恨めしそうにマナを見つめる。その目の前で、6マナに到達した常連客Tが 《コレンココ・タンク》 を召喚し、山札を3枚捲った。 《タルタホル》 2枚と、 《グレート・グラスパー》 が露わになる。快調な動きだ。

ターンを返されたPULUは苦しかった。6マナ溜まっているものの、手札に 《コレンココ・タンク》 はない。3度のマナ加速で先んじたのに、相手の 《コレンココ・タンク》 で取り返された。

少し考えた後、彼はマナゾーンへ7枚目のカードを置いた。だがそれだけだった。

打つ手のないPULUがターンを渡すと、常連客Tは 《自然星人》 を召喚し、 《グレート・グラスパー》 をマナから手札に加えた。

顔をしかめ、常連客Tの山札枚数を確認するPULU。14枚だ。まだ猶予はある。

この時、常連客Tもまた苦しかった。

《自然星人》 でマナを増やした時点で、彼が確認できている 《グレート・グラスパー》 は2枚きり。嫌な予感が微かに脳裏をかすめたが、山札を削っていけばいずれ残りも引けるだろうと彼は判じた。

常連客Tがターンを返すと同時、PULUは猛然と 《自然星人》 を召喚。手札に加えるのはやはり 《グレート・グラスパー》

だが先攻の取り合いに負けた代償は、一手の遅れは重い。常連客Tは 《グレート・グラスパー》 《コレンココ・タンク》 の上に乗せ、PULUの 《自然星人》 をマナへ送った。

常連客Tのターンはまだ終わらない。

更にマナをタップして、召喚する。もう1枚の 《グレート・グラスパー》 を。手札に抱え込んでいた2枚目の 《グレート・グラスパー》 を。

「ひどないですか?もう…」

PULUが悲鳴を上げた。彼のバトルゾーンにはもう何もない。

常連客Tのマナに控えているのは 《水上第九院 シャコガイル》 3枚に 《ブロック・キング》 1枚。

このターンでは、まだ終わらない。けれど、さほど猶予はない。
常連客Tは 《グレート・グラスパー》 でシールドへ攻撃宣言。傍らに並んだ 《グレート・グラスパー》 の分と合わせて2体分の効果を使い、 《水上第九院 シャコガイル》 《ブロック・キング》 を並べ、墓地を山札に加える。

PULUは山札のシャッフルを終えると、選ばれた3枚のシールドに手を伸ばした。反撃の糸口をつかめるかどうかは、この3枚にかかっていた。

今年の限定戦は、いつも以上にシールド・トリガーが強い。

だからこそ、相手のシールドを破らずして勝つことが可能な 《水上第九院 シャコガイル》 系のデッキを彼ら2人は選択している。

しかし、言い換えれば。

シールド・トリガーさえ踏ませれば。

負けを勝ちに、黒を白に、無理を道理に覆すことが出来る。

PULUは3枚のシールドを見た。常連客TはPULUの表情を伺おうとしたが、その間も無くPULUがシールド・トリガーの使用を宣言した。

《罠の超人》 !」

アンタップしている 《グレート・グラスパー》 をマナへ送り込む。
そして自身のターンを迎えると、PULUは即座に動いた。

考えない。思考時間は必要ない。何をすべきかは明らかだ。

《グレート・グラスパー》 を進化させずに召喚。常連客Tの 《ブロック・キング》 がマナへ飛ぶ。

そして 《罠の超人》 の上に2枚目の 《グレート・グラスパー》 を重ね、常連客Tの 《グレート・グラスパー》 へ攻撃。 《水上第九院 シャコガイル》 を2枚揃え、ターンを終えれば残る山札は5枚。

常連客Tの山札の枚数を下回っている。このターンさえ、ここさえ乗り切れば勝てる。

祈るように見つめるPULUの目の前で、常連客Tはゆっくりとカードを引いた。それから 《水上第九院 シャコガイル》 を出した。

何かあるの?と訝しがるPULU。常連客Tは答えず、笑いながら 《爆殺!! 覇悪怒楽苦》 を唱えてPULUの 《グレート・グラスパー》 を破壊した。

彼は、勝敗が決したことをよくわかっていた。それでも投了はせず、最後までゲームをやりきることを選んだ。

常連客Tはターンを終えた。

PULUも呼応してターン終了を宣言し、自分の山札を引き切り、そしてゲームが終わった。

先攻で思い切り回ったのにな、と常連客Tは言った。彼の言葉からは対戦相手への賞賛と敬意と、そしていくばくかの悔恨が感じられた。

Winner:PULU

「今日はPULUさんの日だよ」

最後にそれだけを彼は言った。短すぎも長すぎもしない、丁度良い言葉だった。

「常連客Tを応援してたんだけどね」

直後に声をかけてきたのは、2人の戦いを見ていたパタである。彼もPULUとの付き合いは長い。日本一に輝いた頃のPULUを知っている。

「地球が破壊される前にPULUが2度も日本一になるとは、ちょっと思えないな」

冗談を飛ばし、場の空気を明るくするパタ。2人は笑い、席を立った。
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